食事・運動・社会参加でイキイキ健康生活を目指しましょう!(平成28年3月12日 平成会総会講演から)

 昨年の平成会総会の講演でもお話ししましたように、日本人の平均寿命は80歳を超えて、女性は86.61歳(世界1位)、男性は80.21歳(世界4位)となりました。しかし世界諸国と比べて、健康寿命(実際上の病気の有無に関わりなく、介護を受けたり寝たきりになったりせず、活動性の高い状態で日常生活を送れる期間)は、それほど突出して高いわけではありません(図1)。日本人の健康寿命は図2に示しますが、2013年のデータでは平均寿命と健康寿命の差は男性では9.02歳、女性では12.4歳の差があり、この間介護生活を送ると推測されます(図2)。イキイキとした健康生活を送るためには、この健康寿命を延ばすことが重要です。

 それでは健康寿命を延ばし、イキイキとした健康生活を送るためには、何が必要でしょうか?平成会はすでに発足から28年を迎えますが、これまで様々な活動から、食事と運動により、健康な生活を送ることを目指してまいりました。健康な生活を送るためには、上記のごとく、食事と運動が重要なことはすでに明らかです。さらに近年、社会参加が死亡率や認知症の発症率を低下させることが報告されています(図3)。

 平山らは(平山朋,他(2012)静岡県高齢者コホート調査に基づく運動・栄養・社会参加の死亡に対する影響について.第58回東海公衆衛生学会)、静岡県の高齢者14,001人の約9年間の追跡調査を行い、社会活動が運動などと同様に、死亡率の低下に影響していると報告しています(図4)。

 また海外の報告でも、65歳~95歳の男女356人の6年間の追跡調査で、社会活動が糖尿病や慢性閉塞性肺疾患の発症予防となる可能性ありと報告(Strawbridge WJ, at al. (1996) Successful aging: predictors and associated activities. Am J Epidemiol, 144(2): 135-141)されています。さらに認知症発症に関しても、732名の地域在住高齢者を6.4年間追跡調査し、社会活動が認知症の発症の予防効果を示した(Wang HX,at al.(2002) Late-life engagement in social and leisure activities is associated with a decreased risk of dementia: a longitudinal study from the Kungsholmen project.Am J Epidemiol, 155(12): 1081-1087)と報告されています(図5)。

 一方、静岡県の9年間の追跡調査(静岡県高齢者コホート調査)も報告されております。平成11年から、県内の高齢者14,001人を対象に生活習慣や社会参加状況などに関する追跡調査を行っています。その結果によると、運動・栄養・社会参加について良い習慣がある人は、長生きであることが分かっています「ふじのくに健康長寿プロジェクト」から引用(静岡県公式ホームページ)(図6)。

 健康生活を送るためには、昨年お話ししました「フレイル」(年齢に伴って、筋力や心身の活動の低下した状態)から脱却する事が重要です。高齢者の多くはこの「フレイル」の状態を経て介護状態になります。一旦介護状態になりますと、元の健康な状態に戻る事は困難です。「フレイル」は介護状態にならないように予防が必要な人と考えられ、日本では65歳以上の方の約11%、約300万人が「フレイル」の状態と想定されています(図7)。

 フレイルになるということは、自立した生活ができなくなったり、認知症を発症し、他者に介護を受けるようになることですが、これは運動を継続することでも、予防可能です。図8に示しますように、運動を継続することで、生活の自立度がアップし、認知症の発症率が50%に減らすことができたとの報告があります(図8)。

 そして「フレイル」は図9に示すような経過を経て、次第に介護状態となっていくわけですが、この経過の様々な点で社会参加をすることで、フレイルへの移行を遅らせることが可能です。

 このように、様々なデータから、食事・運動・社会参加によって、フレイルを予防し、イキイキとした健康生活を送ることが可能と思われます(図10)。

 

 様々な形で社会参加を実践することは、人と接する機会を増し、活動性の低下の予防、体力・筋力の低下を防止し、フレイルの悪循環を防ぎ、ひいては判断力の低下、認知症の予防となります。皆さん、積極的に様々な社会参加を行って、イキイキ健康生活を目指しましょう!(図11)。

                     平成28年3月12日

                   (文責:平沼クリニック院長 大畑 充)

 

 

 

 

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認知症の予防(認知症と不眠)(2015年12月5(平成会講演から):片山晃医師の講演スライド

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今年のインフルエンザワクチン何が変わったの? 肺炎の予防(2015年12月5(平成会講演から))

【インフルエンザの流行状況と新しいワクチン】

 まだ記憶に新しい出来事ですが、2009年には世界中で新型インフルエンザがまん延し、多数の死者が出ました。その中で日本の死亡者数は200名と世界で最も少なく、アメリカを含めた世界各国ではさらに多くの死亡者を出しました。また日本では妊婦の死亡者はありませんでした。これは、日本の医療制度(皆保険制度)により、誰もが何処でもすぐに医療機関を受診する事ができ、早期に診断・抗インフルエンザ薬の投与を受けられたこと、学級閉鎖、マスクの使用等の予防策を徹底した成果であると考えられます。逆に医学先進国のアメリカが多数の死亡者を出したのは、早期受診・早期治療が困難な医療体制(保険制度の不備)のためであったと推測されます(図1)。

 2014/15シーズンのインフルエンザの流行開始時期は201411月下旬で、平年より2週間程度早めであり、ピークの時期は2015年1月下旬でした。今年はすでに9月から発症が見られます(図2)。

 ここ数年のウイルスの分離・検出状況をみますと、A型に関しましてはワクチンの内容と合ったA(H1N1)A型(H3N2)の流行が見られ、B型に関しては、B型ビクトリア系統とB型山形系統の混合流行が認められます(図3)。このような状況から、今年度のインフルエンザウイルスは3価(A型2種類+B型1種類)から4価(A型2種類+B型2種類)へと変更となりました。WHOも4価ワクチンを推奨しており、世界的にも4価ワクチンへ移行しております(図4)。

【かぜとインフルエンザの違い】

 かぜ症候群は上気道(鼻腔、副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭)に対して急性に発症する炎症性疾患で、通常成人では年2~4回、子供は5~9回も罹患します。症状はのどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻閉、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感などです。インフルエンザは通常、これらかぜ症状は少なく、突然の高熱、頭痛や筋肉痛などの全身の痛みで発症し、いわゆる風邪症状はこの後に出現してくることが多いことが特徴です(B型インフルエンザは微熱のこともあります)。インフルエンザの潜伏期間は1~3日ですが、感染した患者からのウイルスの排出は3日目が最も多く、7日までは排出の可能性があります。大多数の人は特に治療を行わなくても、1~2週間で自然治癒しますが、抗インフルエンザ薬の投与により、発熱期間は短縮し、重症化も予防されることがわかっています(図5)。

【インフルエンザの種類】

 インフルエンザにはA型、B型、C型の3種類があります。このうちB型とC型は1種類ですが、A型は、ウイルス遺伝子の表面にある赤血球凝集素(HAhaemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NAneuraminidase)という糖蛋白(人間の指紋のようなものと思って下さい)の組み合わせによって、約144種類のウイルス亜型が存在します。HAH1H1616種類、NAN1N9の9種類あり、これらの組み合わせにより多種類のウイルスの亜型が存在するわけです。20世紀に流行したのは H1N1(ソ連型), H2N2(アジア型)H3N2(香港型), H1N1pdm2009(新型と言われたもの)などです(図6)。

【インフルエンザの診断と治療】

1)インフルエンザの診断

 通常インフルエンザの診断は①症状:突然の発症、38℃を超える発熱(高熱を呈さないこともあります)、風邪様症状、頭痛、関節痛などの全身症状、②迅速インフルエンザ診断キット(口や鼻からぬぐい液を採取して15分程度で結果がでます)で行います。しかし感染早期では迅速キットでは検出できない場合もあり、翌日再検査して感染が確定する場合もあります。

 2)インフルエンザの治療・出校・出勤:

 治療は①一般的対症療法(安静と睡眠、水分補給、部屋の保湿と加温、解熱剤(アセトアミノフェンが比較的安全)の投与、風邪様症状に対する投薬)と②抗インフルエンザ薬(経口剤のタミフル、吸入薬のリレンザ(ともに5日間投与)があり、最近は1回の投薬で治療が可能な注射薬のラピアクタ(1回注射のみ)、吸入薬のイナビル(1回の吸入のみ)も使用されています。これらの抗インフルエンザ薬は妊婦にも投薬可能で、授乳者は授乳は2日間中止するのが一般的です(図7)。Lancet2015385, 1729-37)という有名な論文で、タミフルの使用は症状や抗菌剤の投与の必要性、肺炎の合併を優位に予防したと報告しておりますし、また他の論文でも48時間以内の投薬によって、死亡率は低下したと報告されています。さらに中国で発生している高病原性鳥インフルエンザを発症した患者も3日以内の抗インフルエンザ薬の投与で死亡率が低下したと報告されています。また治療後の出校については、「学校保健安全法施行規則」により、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでとなっており、出勤に関しても同様に指導します。

 インフルエンザの予防は帰宅時のうがい、手洗い、流行前のワクチン接種、適度な湿度の保持、十分な休養と睡眠が重要です(図8)。妊婦や授乳者へのワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けたことによって流産や先天異常の危険性が高くなるという報告はありません。また母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません(図9)。またインフルエンザワクチンの接種による死亡率の低下、発症率の低下も報告されています(図10)。また他のワクチンとの接種間隔は図11に示しました。

【新型インフルエンザとは?また鳥インフルエンザは新型インフルエンザになるのか?】

 新型インフルエンザの定義は、「現在の人類のほとんどが免疫を持たないインフルエンザウイルスが継続的なヒトーヒト感染によりパンデミックを起こした場合」とされ、多くは鳥インフルエンザが変化して出現すると考えられています。すべての人が抵抗力を持っていないため、世界中で同時に流行した場合には大被害をもたらすと考えられています(実際2009年に発生した新型インフルエンザは世界中に大被害もたらしました)(図12)。2015718日時点で、中国で発生している高病原性鳥インフルエンザAH7N9)は678名が発症し、そのうち261名(38.5%)が死亡しています。しかしこのうち抗インフルエンザ薬が48時間以内に投与されたのはわずか10%程度であったと報告されています。またAH5N1)は発症者数826名に達し、なんと440名(53%)が死亡しています。これも多くの患者は48時間以内に抗インフルエンザ薬が投与されておらず、発症3日以降に投与された患者の死亡率が53.2%と高率であったのに対し、3日以内に投与された患者の死亡率は6.3%と低率であったことが報告されています(図13)。現時点ではパンデミックな状態ではなく、新型インフルエンザの定義には当たりません。

【肺炎と肺炎の予防】

 近年肺炎による死亡者が増加しており、これまで死因の4位(1位・悪性新生物、2位・心疾患、3位・脳血管疾患、4位・肺炎)でしたが、平成23年には肺炎が死因の3位となっています(図14)。また市中肺炎の入院患者は、65歳以上が大多数を占めます(図15)。このうち高齢者の肺炎の原因で最も多いのは肺炎球菌(肺炎の原因の約40%)ですが、この肺炎球菌にはワクチン(1回接種で約5年間は有効です(対象は65歳以上))があり、かなりの予防効果を持っております。また今年から65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳以上の方に公費でワクチン接種が行われることになりました(図16)。

2015年 12月 平沼クリニック 大畑 充(文責)

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ストレスチェック制度について

【ストレスチェック制度】

 平成26年6月25日に公布された労働安全衛生法の一部改正により、ストレスチェックと面接指導の実施が平成27年12月1日から義務化されました。これは定期的に労働者のストレス状況の検査を行い、本人にその結果を通知して、自らのストレス状況について、把握してもらい、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させる(一次予防:労働者のメンタルヘルス不調の未然防止)とともに、検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因を低減させることを目的としています。 

【ストレスチェックの概要】

1)対象:常時雇用する労働者(従業員50人未満の事業所は当面は努力義務)に対して、医師、保健師等による、心理的負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施する事が事業者の義務

2)実施回数:1年に1回

) 検査内容:ストレスチェック調査票を用いる(国が標準として定めている57項目の質問票(またこれを簡略化した簡易版(23項目)もある))。検査結果は検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく、事業者に提供する事は禁止されます。その結果、高いストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申し出があった場合には、医師による面接指導を行う。事業者は面接指導の結果のもと、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、就業上の措置を講じなければならない。また申出を理由とする不利益な取り扱いは禁止されます。

4)集団分析の実施:職場の一定規模の集団(部、課など)ごとのストレス状況を分析し、その結果を踏まえて職場環境を改善することが事業者の努力義務となる。この情報は事業者が把握しても良い。 

【ストレスチェックの実施について】

 ストレスチェックの実施責任主体は事業者であり、事業者は制度の導入方針を決定・表明します。その後衛生委員会で必要事項を審議・確認し、労働者に周知させる。 

【ストレスチェックの実施方法】

1)ストレスチェックは1年以内ごとに1回以上実施し、調査票によることを基本とする。従業員に実施を強制することはできない。

2)ストレスチェックの実施者となれる者は、医師、保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士とする。

3)労働者に対する人事権を有する者は、実施者にはなれない。

4)外部機関に委託することも可能。

 【同意の取得】

 個人のストレスチェックの結果を事業者に提供する際の労働者の同意の取得は以下の方法に限定される。

1)結果の本人への通知後に、個々人ごとに同意の有無を確認

2)本人から面接指導の申し出があった場合には、同意したものとみなす。

 【高ストレス者を選定するための方法】

 次の①及び②に該当する者を高ストレス者として選定する。

 ①「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が高い者

 ②「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が一定以上であり、かつ「仕事のストレス要因」及び「周囲のサポート」に関する項目の評価点の合計が著しく高い者

 ※上記①及び②に該当する者の割合については、以下の評価基準の例では概ね全体の10程度としていますが、それぞれの事業場の状況により、該当者の割合を変更する事が可能です。 

【高ストレス者の評価基準の例】

 (職業性ストレス簡易調査票(57項目)を使用する場合の評価基準の設定例)

 1)「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数(ストレスが高い方を4点、低い方を1点とする)を算出し、合計点数が77点以上である者を高ストレス者とする。

 2)「仕事のストレス要因」(17項目)及び「周囲のサポート」(9項目)の合計点数(ストレスが高い方を4点、低い方を1点とする)を算出し、合計点数が76点以上であって、かつ、「心身のストレス反応」の合計点数が63点以上である者を高ストレス者とする。

 上記の1)あるいは2)に該当する者を高ストレス者と評価する。


【ストレスチェックの事後措置】

1)個人のストレスチェック結果の保存は、事業者が、実施者に行わせる(実施者による保管が困難な場合は、実施事務従事者(実施者を除く)に保管させることも可能。

2)面接指導は、労働者から申出があった後、遅滞なく行うことが適当であり、当該事業所の産業医等が実施する事が望ましい。

3)高ストレスと評価された者のうち、面接指導の申出を行わない労働者に対して、実施者が面接指導の申出勧告を行うことを推奨。

 【ストレスチェック結果の記録と保存】

 1)ストレスチェックの結果の記録は、事業者が実施事務従事者に保存させるよう、必要な措置を講じる。

 2)労働者の同意により、実施者から事業者に提供された結果の記録は、事業者が5年間保存しなければならない。

【職業性ストレス簡易調査票(57項目)】
A:あなたの仕事についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付
けてください。 【回答肢(4段階)】そうだ/まあそうだ/ややちがう/ちがう
1  非常にたくさんの仕事をしなければならない
2  時間内に仕事が処理しされない
3  生懸命働かなければならない
4  かなり注意を集中する必要がある―
5  高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ
6  勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない
7  からだを大変よく使う仕事だ
8 自分のペースで仕事ができる
9 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
10職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる
11 自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない
12私の部署内で意見のくい違いがある
13私の部署と他の部署とはうまが合わない
14.私の職場の雰囲気は友好的である
15私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない
16仕事の内容は自分にあつている
17働きがいのある仕事だ

 B:最近1か月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはま
るものに○を付けてください。【回答肢(4段階)】ほとんどなかった/ときどきあった/
しばしばあった/ほとんどいつもあった
1 活気がわいてくる
2 元気がいっぱいだ
3 生き生きする
4.怒りを感じる
5 内心腹立たしい
6 イライラしている
7 ひどく疲れた
8 へとへとだ
9 だるい
10気がはりつめている
11不安だ
12落着かない
13ゆううつだ
14何をするのも面倒だ
15 物事に集中できない
16気分が晴れない
17仕事が手につかない
18悲しいと感じる
19めまいがする
20,体のふしぶしが痛む
21頭が重かったり頭痛がする
22首筋や肩がこる
23 月要力り請い
24目が疲れる
25動悸や息切れがする
26胃腸の具合が悪い
27.食欲がない
28使秘や下痢をする
29よく眠れない

 C:あなたの周りの方々についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください。【回答肢(4段階)】 非常に/かなり/多少/全くない

次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか? 1上司 2職場の同僚 3配偶者、家族、友人等

あなたが困つた時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか? 4上司 5職場の同僚 6配偶者、家族、友人等

あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?
くれますか?   7 上司 8 職場の同僚 9 配偶者、家族、友人等

D:満足度について
【回答肢(4段階)】満足/まあ満足/やや不満足/不満足
1 仕事に満足だ 2 家庭生活に満足だ

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喫煙の害・受動喫煙の防止の話

喫煙の害・受動喫煙の防止(第104回院内勉強会 平成27年9月17日 担当:大畑)より

  今回は毎月行っている職員の院内勉強会でお話した「喫煙の害・受動喫煙の防止」について、まとめてみました。

1.労働安全衛生法の改正(平成26年6月25日)が行われ、下記に内容が必須となりました。

1)ストレスチェック制度の創設(平成27年12月1日から開始)

 2)受動喫煙防止対策の推進

労働者の受動喫煙防止のため、事業者及び事業場の実情に応じ、適切な措置を講ずる

ことが、努力義務となる。

WHO:喫煙・受動喫煙が、世界的規模で健康、社会、経済及び環境に及ぼす破壊的な

影響について、・・・死亡、疾病及び障害を引き起こすことが明確に証明された。

 

2.成人喫煙率の推移

現在習慣的に喫煙している者の割合は、19.3%です。性別にみると、男性32.2%、    女性8.2%であり、男女ともに10年間で減少傾向にあります(下図)。

喫煙習慣者の年次推移(性・年齢別)(成人喫煙率(厚生労働省国民健康栄養 調査)より)

 

 3.たばこの煙

たばこの煙には主流煙、副流煙、呼出煙があります。このうち副流煙と呼出煙の部が受動喫煙であり、有害物質の発生は主流煙より、副流煙の多く含まれます。

1)主流煙:たばこ自体やフィルターを通過して口腔内に達する煙

2)副流煙:点火部から立ち昇る煙

3)呼出煙:吸い込んだ主流煙が、喫煙者から吐き出された煙、呼出煙の害は喫煙後

約30分間持続する。

 

4.たばこの害

たばこの煙の中には、4,000種類の化学物質が含まれ、そのうちニコチン、タール、一酸化炭素など、200種類以上の有害物質が含まれています。さらにその中には63種類の発がん物質も含まれています。有害物質は主流煙より、副流煙により多く含まれています。

またたばこの煙は微小粒子状物質(PM 2.5)の発生源であり、花粉の30分の1の大きさであるため、直径0.2mmの肺胞まで到達します。たばこを吸える喫茶店、居酒屋は北京の最悪時の濃度と変わらず、緊急避難すべきレベルです。フィルターを介せずに周囲に広がる副流煙に多く、中国から飛来するPM 2.5よりも受動喫煙の影響の方が大きいとかんがえられています。さらに呼出煙からもPM 2.5は発生します。

 

①ニコチン:血管収縮作用、依存性薬物、中枢神経興奮・抑制作用

ニコチンは大脳の快楽中枢に働いて快感をもたらしますが、この快感を求めて喫煙を

続けていくと脳に変化が起こり、今度は喫煙していないと、調子が悪くなる、いわゆる

タバコ依存につながる。その他にも、消化器系では胃の働きの低下、心臓・血管系に対

しては急性作用があり、血圧上昇、抹消血管の収縮などの影響を及ぼす。

②タール:たばこの煙の粒子相の総称で、発ガン作用がある。

③一酸化炭素:慢性的一酸化炭素中毒→全身的な酸素欠乏→心臓への負担

※ニコチンには依存性があるが、発がん性は無い。低タール/低ニコチンタバコには

健康上の利益は無く、低タールたばこに用いられている有孔フィルターでは、主流煙中の

有害物質は希釈されて減るが、副流煙中ではかえって増加する。

※喫煙男性は、非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が約4.5倍高く、喫煙はWHOにおい

て、発がん評価分類でグループ1(人間に対して発がん性あり、十分な証拠がある)に分類

される。

主流煙と比べた副流煙中の有害物質

ニコチン       2.8倍

タール        3.4倍

一酸化炭素     4.7倍

アンモニア      46.3

下図は、喫煙者と非喫煙者の肺の実物です。喫煙者の肺は明らかに黒色で、非喫煙者の肺の色調と異なることがわかります。

5.喫煙と肺癌

日本人おける死亡原因は現在がんが1位、心臓病が2位、肺炎が3位、脳卒中が4位です(下図)。そのうち、がんの死亡者数は肺癌が1位となっています(下図)。喫煙は肺がんの大きなリスク要因です。欧米では、喫煙者の肺がんリスクは、非喫煙者の20倍以上とされているが、日本人を対象とした研究(2008年)では、喫煙者の肺がんリスクは男性で4.5倍、女性で4.2倍という結果でした(International Journal of Cancer 2002年)。

 

下記の図のごとく、たばこを吸わない人、やめた人、吸う人別に、その後平均7.8年間の肺癌発生率を比べた結果、たばこを吸う人の肺がん発生率は吸わない人に比べ、男性では4.5倍、女性では4.2倍でした。またやめた人は吸わない人に比べ、男性では2.2倍、女性では3.7倍でした。

 

6.その他の害

①心血管疾患:狭心症、心筋梗塞、動脈硬化など

②がん:喉頭がん(32.5倍)、口腔・咽頭のがん(3.0倍)、膀胱がん(1.6倍)、

食道がん(2.2倍)、胃がん(1.4倍)、膵がん(1.6倍)、肝がん(3.1倍)

③呼吸器疾患:COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息など

④脳卒中:海外の研究で、副流煙で脳卒中のリスクが30%上昇したとの報告がある。

(Malek AM, et al. Am J Prev Med.2015 Jul 16)

 

7.受動喫煙の害

平山らは日本で行った疫学調査で、受動喫煙による害を報告しています。これによると、下記の図のごとく、喫煙者の夫の妻(非喫煙者)の肺癌死亡率は夫が喫煙しない場合を1とすると、夫が一日1本から19本の喫煙をする場合には1.5倍、20本以上喫煙する場合には1.91倍になると報告されています。また受動喫煙により、副鼻腔癌、虚血性心疾患の罹患率が上昇し、小児の場合には母が喫煙者の場合、喘息や気管支炎の発現頻度が増すことが報告されています。

8.禁煙の効果

喫煙を続ける人の寿命は約10年短くなると考えられています。これは禁煙することによって、改善する事が出来ます(下図参照)。

皆さん、ご自身のため、家族のために禁煙しましょう!

 

 

 

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