生き生き健康長寿は、毎日の工夫と社会参加の実行から(平成29年3月11日 平成会総会講演から)

 平成会の今年度のテーマは、生き生き健康長寿は、毎日の工夫と社会参加の実行からです。「生き生き健康長寿」とは、様々な生きがいをもって、健康な状態で長生きすること=健康寿命を延ばすことです。このためには、これまで平成会が長年継続してきた食事と運動、そして生活習慣の改善ができるように、毎日の生活を工夫し、生きがいをもてるような社会参加を行うことによって、フレイル(介護が必要とならないように予防が必要な状態)を予防することと考えられます。私の患者さんの中には地域の学校の通学の安全を守る社会活動や率先して平沼地区の清掃をされている方もございます。これはまさにご本人にとりまして、大きな生きがいとなるとともに、社会貢献となっておリます。どのような行動であれ、社会とつながって生活することは、健康寿命を延ばすことが証明されています(図1)。

 2016年のWHOの統計では日本人の平均寿命は83.7歳で世界第1位であり、男性は80.5歳で世界第6位、女性は86.5歳で世界第1位です。1947年当時の男性の平均寿命は50歳、女性は54歳であり、日本人はこの70年ほどの間に、30年以上も長生きするようになりました(図2)。しかし世界諸国と比べて、健康寿命(実際上の病気の有無に関わりなく、介護を受けたり寝たきりになったりせず、活動性の高い状態で日常生活を送れる期間)は、それほど突出して高いわけではありません(図3)。従って、いかにこの健康寿命を延ばすかが重要となってきます(図4)。

 平成会の講演では何度か「フレイル」についてお話をしてきました。フレイルとは、元々「虚弱」という意味で、要介護にならないように、予防が必要な状態を示し、健康な状態と要介護が必要な状態の中間の状態と考えることができます。これらは加齢や様々な疾患、ストレスなどが要因で起こってきます。現在の日本人の65歳以上の方の約11%(約300万人)がフレイルの状態であると推測されています。(図5)。フレイルは図6に示すような経過を経て、次第に介護状態となっていくわけですが(図6)、フレイルには様々な多面性があります。身体のフレイル(体の状態が虚弱になる)、精神心理のフレイル(意欲、判断力や認知機能の低下、うつなど)、社会性のフレイル(閉じこもり、孤食など)です(図7)。これらの状態が負の連鎖を起こし、フレイルが進行していきます。しかしこの経過の様々な点で、食事や運動、そして社会参加をすることで、フレイルへの移行を遅らせることが可能です。そしてこのフレイルの状態を回避することが、健康寿命を延ばすことになります。

それでは皆さん、ここでフレイルの自己チェックを行ってみて下さい。図8のチェックシートを利用して、ご自身の点数をチェックしてみて下さい。点数が、3点以上の方はフレイルと考えられます。また1~2点の方はフィレイルの予備軍と考えられます(図8)。その他身体的なフレイルのチェックは「指輪っかテスト」、「椅子立ち上がりテスト」などがよく使用されます(図9、図10)。

健康寿命を延ばし、「生き生き健康長寿」の生活を送るためにはどうしたらよいのでしょうか?図11に示す研究では、運動、食事、社会参加をすべてを行っている場合と、これらを全く行わない場合のサルコペニア(老化して筋肉が萎縮してしまう状態)の発症の差を示しています。これらを全く行わなかった方は行った方に比べ約3.47倍、サルコペニアとなることが示されています(図11)。

健康長寿のためには、栄養に気を付け(メタボ予防、乳製品やお肉を食べる、しっかり噛んで食べる)、運動(姿勢よく、広い歩道を歩く、目的をもって歩く、いつもより少し速く歩く)を行い、社会活動を行って社会とのつながりを維持し、フレイル・サルコペニアを予防することが重要です(図12)。実際、散歩の歩数と早歩きの時間によって、寝たきり、認知症、サルコペニアなどが予防できること(図13、図14)や社会参加によって、死亡率が低下したという報告がされています(図15)。

生き生き健康長寿のためにフレイルを予防するためには、日常生活の見直しが急務です。①禁煙②適度の飲酒③バランスの良い食事④運動⑤ストレスフリーの生活⑥社会参加 が重要です(図16)。平成会でこれまで培ってきた「食事」と「運動」を実践し、さらに様々な形で社会参加を実践することは、人と接する機会を増し、活動性の低下の予防、体力・筋力の低下を防止し、フレイルの悪循環を防ぎ、ひいては判断力の低下、認知症の予防となります。皆さん、しっかり食べて、しっかり動いて、みんなで楽しく社会活動を行って生き生き健康長寿を目指しましょう!(図17)。

 

     平成29年3月11日 (文責:平沼クリニック院長 大畑 充)

 

 

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冬に多い感染症―インフルエンザとノロウイルス―(平成会講演から):2016年12月3日

【新しいインフルエンザワクチン】

 過去数年間の流行の分析から、B型インフルエンザはB型ビクトリア系統とB型山形系統の混合流行が認められることが明らかとなりました。このため、2015年冬から、インフルエンザワクチンはこれまでの3価(A型2種類+B型1種類)から4価(A型2種類+B型2種類)へと変更となりました(図1)。WHOも4価ワクチンを推奨しており、世界的にも4価ワクチンへ移行しております。昨年変更されたワクチンは、予防効果があったことが報告されています(A型ではワクチン非接種者の発症率が3.2%であったのに対し、接種者は1.51%と低率でありました。B型では非接種者の発症率が1.5%に対し、接種者は1.4%と差はありませんでした)(図2)。今年のワクチンはA2種類(A/カルフォルニア7/2009/H1N1A/香港/4801/2014/H3N3)とB2種類(B/山形、B/ヴィクトリア)となり、昨年とはAH3N2が変更となっています。

【インフルエンザの症状・風邪との違い】

 かぜ症候群の症状はのどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻閉、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感などです。これに対し、インフルエンザは通常、これら風邪症状は少なく、突然の高熱、頭痛や筋肉痛などの全身症状で発症し、いわゆる風邪症状はこの後に出現してくることが多いことが特徴です。しかし高齢者やB型インフルエンザでは微熱にとどまることもまれではありません。インフルエンザの潜伏期間は1~3日ですが、感染した患者からのウイルスの排出は3日目が最も多く、7日までは排出の可能性があります。大多数の人は特に治療を行わなくても、1~2週間で自然治癒しますが、抗インフルエンザ薬の投与により、発熱期間は短縮し、重症化も予防されることがわかっています(図3)。

 【インフルエンザの種類】

インフルエンザにはA型、B型、C型の3種類があります。このうちB型とC型は1種類ですが、A型は、ウイルス遺伝子の表面にある赤血球凝集素(HAhaemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NAneuraminidase)という糖蛋白(人間の指紋のようなものと思って下さい)の組み合わせによって、約144種類のウイルス亜型が存在します(図4)。HAH1H1616種類、NAN1N9の9種類あり、これらの組み合わせにより多種類のウイルスの亜型が存在するわけです(図5)。

 

【インフルエンザの診断と治療】

1)インフルエンザの診断

通常インフルエンザの診断は①症状:突然の発症、38℃を超える発熱(高熱を呈さないこともあります)、風邪様症状、頭痛、関節痛などの全身症状、②迅速インフルエンザ診断キット(口や鼻からぬぐい液を採取して15分程度で結果がでます)で行います。しかし感染早期では迅速キットでは検出できない場合もあり、半日から一日後に再検査して感染が確定する場合もあります(図6)。

 2)インフルエンザの治療・出校・出勤:

 治療は①一般的対症療法(安静と睡眠、水分補給、部屋の保湿と加温、解熱剤(アセトアミノフェンが比較的安全)の投与、風邪様症状に対する投薬)と②抗インフルエンザ薬(経口剤のタミフル、吸入薬のリレンザ(ともに5日間投与)があり、最近は1回の投薬で治療が可能な注射薬のラピアクタ(1回注射のみ)、吸入薬のイナビル(1回の吸入のみ)も使用されています。これらの抗インフルエンザ薬は妊婦にも投薬可能で、授乳者は授乳は2日間中止するのが一般的です。また治療後の出校については、「学校保健安全法施行規則」により、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでとなっており、出勤に関しても同様に指導します(図7、図8)。

 

【インフルエンザの予防】

 インフルエンザの予防は帰宅時のうがい、手洗い、流行前のワクチン接種、適度な湿度の保持、十分な休養と睡眠が重要です。妊婦や授乳者へのワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けたことによって流産や先天異常の危険性が高くなるという報告はありません。また母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません(図9)。またインフルエンザワクチンを受けられないお方については図10に、他のワクチンとの接種間隔は図11に示しました。

 

【肺炎球菌ワクチンの接種の推奨】

 インフルエンザの重大な合併症に肺炎があります。インフルエンザ流行時の肺炎の原因は約55%が肺炎球菌であり、肺炎球菌ワクチンの接種も有用です(図12)。

【感染性胃腸炎とは?】

感染性胃腸炎はウイルスや細菌、有害物質などに汚染された食物や水によって引き起こされ、主として下痢・腹痛・発熱・嘔吐などの症状を起す病気です。毎年秋から冬にかけて流行します。一般的にはウイルスによるものは比較的軽症で、重症化例の80%以上は細菌性です(図13)。

【感染性胃腸炎の原因】

政府広報オンラインからのデータでは(図14)胃腸炎の原因はウイルス性70.0%、細菌性22.2%、自然毒1.0%、化学物質0.5%、その他1.8%、原因不明4.5%となっています。これらのうち狭義の意味では感染性胃腸炎はウイルス性、細菌性であり、自然毒や化学物質は非感染性胃腸炎と分類されます。また原因食品では、魚介・加工品類が最も多く、肉類、野菜、乳製品などからの感染も多く認められます。夏季には細菌性食中毒(カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなど)が多く、冬季にはウイルス性食中毒(ほとんどはノロウイルス)が多く認められます。

 【冬に多い感染性胃腸炎・ノロウイルス】

 感染性胃腸炎で最も多く認められるのは、ノロウイルスによるもので、11月頃から増加し、1月~2月にピークを迎えます。感染経路はウイルスを蓄積したカキなどの貝類の生食、患者の糞便・吐物からの経口感染、糞便や嘔吐物の乾燥した中に含まれているウイルス粒子が空気を介しての経口感染です。潜伏期間は1~2日で、症状は嘔気・嘔吐、下痢、腹痛が主な症状で発熱は比較的軽度です。症状は通常1~2日で改善傾向となります。軽快後も3日間は便中にウイルス排泄が続くため、患者や周囲の人の厳重な手洗いが必要です。一般的な治療は点滴などで脱水を改善し、整腸剤や抗生剤の投与を行います。強力な下痢止めは病原体の排泄を遅らせるため通常は使用しません。体温が38℃以上を持続したり、下痢が一日10回以上続いたり血便があったり、脱水、腹痛、嘔吐などの症状が強い場合には重症で、入院加療が必要です。感染予防は、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱、患者の糞便・吐物の処理で、アルコール消毒では死滅しません。消毒には次亜塩素酸ナトリウム液での処理が必要です。一般的な次亜塩素酸ナトリウム液の作り方は500mlのペットボトルを用意し、そのフタ1杯(5ml)のハイター(次亜塩素酸ナトリウム6%)を入れて、あとは水を入れて500mlにすると、1/100溶液(600ppm)が作成できます。ノロウイルスを不活化するのに、600ppmの濃度が必要であり、簡便な作成方法です(図15、図16)。

【感染性胃腸炎の予防】

 感染性胃腸炎は予防が最も大切です。予防には①食品の買い方(肉、魚、野菜は新鮮なものを購入し、賞味期限に注意)、②食品の保存の仕方(買い物から持ち帰ったらすぐに冷蔵庫・冷凍庫に保存)、③料理の下準備(手洗いを行い、野菜はよく水洗いをする。室温解凍はせず、解凍したらすぐ料理する)④料理の仕方(加熱するものは十分加熱する。途中で料理をやめる場合には冷蔵庫へ保存し、再調理では十分加熱する)⑤食事の仕方(手を洗い、料理は長く放置せず、早めに食べる)、⑥残った食品の扱い方(時間がたったら捨てる。暖めなおす時には75℃以上にする)などの注意が必要です。家族内で患者さんは出た場合には、手洗いをきちんと行い、タオルは患者さん専用にして、患者さんは浴槽には入らずシャワーとし、吐物や汚物は適切に処理し、感染を広げないようにしましょう)。                                         

                    平沼クリニック 院長  大畑 充

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健診の義務と意義・「病気は早期発見で予防」(2016年7月:「産業医だより」) から

 今回は各会社に勤務されております、労働者の定期健診についてお話いたします。私(平沼クリニック院長・大畑)は数社の産業医を兼務しており、定期的に社員向けに「産業医だより」を発行しています。今回は2016年7月の会社の衛生委員会で提示しました「産業医だより」を掲載いたします。事業主の方、労働者の方に、定期健診の義務と意義に関して、少しでもご理解いただければ幸いです。

【健診の義務と意義・「病気は早期発見で予防」】

  社員の皆さん、定期健康診断(健診)を受けていますでしょうか? 健診は事業者が行う義務があるとともに、労働者はそれを受ける義務があります。またご自身の健康の状態を把握するため、病気の早期発見のため、必ず健診は受けるようにして下さい。

 「病気が見つかるのが怖い」「健診は面倒だ」「自分は若いから健康には問題ない」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、症状が出てからの発見では、かなり進行している場合も少なくありません。健康診断はある意味、病期を早期に発見する、あるいは将来の慢性の病気につながるような軽度の異常を未然に発見するための手段です。現在の日本人の死亡原因(図)の1位はがん、2位は心疾患、3位は肺炎、4位は脳血管疾患です。このうち心臓病と脳血管疾患は高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が原因で、心疾患(冠動脈疾)の発症は(図)、生活習慣病が多ければ多いほど、発症のリスクは高くなります。またがん検診は一般の定期健康診断では行われませんので、40歳以上の方は、各市町村のがん検診(男性は胃、大腸、前立腺、女性は胃、大腸、乳房、子宮)や病院でのがん検診をお受けになることをお勧めします(図2)。

【定期健康診断とは】

 事業者は、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期に、下記の定期健康診断の11項目(表1)について、医師による健康診断を行わなければなりません(定期健康診断の実施義務(安衛則第44条))。

 ただし、年齢や医師が必要でないと認める場合には省略可能な項目があります。

・腹囲35歳を除く40歳未満の者、妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの、BMI(BMI=体重(kg)/身長(m)2)が20未満である者、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが22未満である者に限る。

・血液検査(貧血検査・肝機能検査・脂質検査):35歳を除く40歳未満の者

・心電図検査:35歳を除く40歳未満の者

【労働者の健康診断受診の義務】

労働者は、事業者が行なう健康診断を受けなければならない義務があります。ただし、事業者が指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合で、他の医師又は歯科医師の行なう労働安全衛生法に基づく健康診断に相当する健康診断を受けて、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでありません。

 【健康診断の結果の記録】

事業者は、この健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければなりません。

 【健康診断の結果についての医師からの意見聴取】 

事業者は、この健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者の健康診断の結果に基づいて、その労働者の健康を保持するために必要な措置について、次の方法によって、医師の意見を聴かなければなりません。

① 健康診断が行われた日から3か月以内に行うこと。
② 聴取した医師の意見を健康診断個人票に記載すること

 【健康診断実施後の措置】

事業者は、健康診断の結果についての医師の意見を勘案して、その必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、次のような適切な措置を講ずる必要があります。
① 就業場所の変更
② 作業の転換
③ 労働時間の短縮
④ 深夜業の回数の減少等の措置
⑤ 作業環境測定の実施
⑥ 施設又は設備の設置又は整備
⑦ 医師の意見の衛生委員会、安全衛生委員会、労働時間等設定改善委員会への報告
⑧ その他の適切な措置
 

【健康診断の結果の通知】 

事業者は、この健康診断を受けた労働者に対して、遅滞なく、健康診断の結果を通知しなければなりません。

 【健康診断結果報告義務】

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、この健康診断(定期のものに限ります。)を行なったときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第6号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

  健診は受けたら終わりではありません。その結果を確認して、再検査を指導された場合には再検査を受けて下さい。また生活習慣の改善の指導があれば、健診の結果を生かして、生活習慣を改善しましょう。健診は自己の健康状態を再確認する良い機会と思ってください。     

                2016年7月  産業医 平沼クリニック 大畑 充

 

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食事・運動・社会参加でイキイキ健康生活を目指しましょう!(平成28年3月12日 平成会総会講演から)

 昨年の平成会総会の講演でもお話ししましたように、日本人の平均寿命は80歳を超えて、女性は86.61歳(世界1位)、男性は80.21歳(世界4位)となりました。しかし世界諸国と比べて、健康寿命(実際上の病気の有無に関わりなく、介護を受けたり寝たきりになったりせず、活動性の高い状態で日常生活を送れる期間)は、それほど突出して高いわけではありません(図1)。日本人の健康寿命は図2に示しますが、2013年のデータでは平均寿命と健康寿命の差は男性では9.02歳、女性では12.4歳の差があり、この間介護生活を送ると推測されます(図2)。イキイキとした健康生活を送るためには、この健康寿命を延ばすことが重要です。

 それでは健康寿命を延ばし、イキイキとした健康生活を送るためには、何が必要でしょうか?平成会はすでに発足から28年を迎えますが、これまで様々な活動から、食事と運動により、健康な生活を送ることを目指してまいりました。健康な生活を送るためには、上記のごとく、食事と運動が重要なことはすでに明らかです。さらに近年、社会参加が死亡率や認知症の発症率を低下させることが報告されています(図3)。

 平山らは(平山朋,他(2012)静岡県高齢者コホート調査に基づく運動・栄養・社会参加の死亡に対する影響について.第58回東海公衆衛生学会)、静岡県の高齢者14,001人の約9年間の追跡調査を行い、社会活動が運動などと同様に、死亡率の低下に影響していると報告しています(図4)。

 また海外の報告でも、65歳~95歳の男女356人の6年間の追跡調査で、社会活動が糖尿病や慢性閉塞性肺疾患の発症予防となる可能性ありと報告(Strawbridge WJ, at al. (1996) Successful aging: predictors and associated activities. Am J Epidemiol, 144(2): 135-141)されています。さらに認知症発症に関しても、732名の地域在住高齢者を6.4年間追跡調査し、社会活動が認知症の発症の予防効果を示した(Wang HX,at al.(2002) Late-life engagement in social and leisure activities is associated with a decreased risk of dementia: a longitudinal study from the Kungsholmen project.Am J Epidemiol, 155(12): 1081-1087)と報告されています(図5)。

 一方、静岡県の9年間の追跡調査(静岡県高齢者コホート調査)も報告されております。平成11年から、県内の高齢者14,001人を対象に生活習慣や社会参加状況などに関する追跡調査を行っています。その結果によると、運動・栄養・社会参加について良い習慣がある人は、長生きであることが分かっています「ふじのくに健康長寿プロジェクト」から引用(静岡県公式ホームページ)(図6)。

 健康生活を送るためには、昨年お話ししました「フレイル」(年齢に伴って、筋力や心身の活動の低下した状態)から脱却する事が重要です。高齢者の多くはこの「フレイル」の状態を経て介護状態になります。一旦介護状態になりますと、元の健康な状態に戻る事は困難です。「フレイル」は介護状態にならないように予防が必要な人と考えられ、日本では65歳以上の方の約11%、約300万人が「フレイル」の状態と想定されています(図7)。

 フレイルになるということは、自立した生活ができなくなったり、認知症を発症し、他者に介護を受けるようになることですが、これは運動を継続することでも、予防可能です。図8に示しますように、運動を継続することで、生活の自立度がアップし、認知症の発症率が50%に減らすことができたとの報告があります(図8)。

 そして「フレイル」は図9に示すような経過を経て、次第に介護状態となっていくわけですが、この経過の様々な点で社会参加をすることで、フレイルへの移行を遅らせることが可能です。

 このように、様々なデータから、食事・運動・社会参加によって、フレイルを予防し、イキイキとした健康生活を送ることが可能と思われます(図10)。

 

 様々な形で社会参加を実践することは、人と接する機会を増し、活動性の低下の予防、体力・筋力の低下を防止し、フレイルの悪循環を防ぎ、ひいては判断力の低下、認知症の予防となります。皆さん、積極的に様々な社会参加を行って、イキイキ健康生活を目指しましょう!(図11)。

                     平成28年3月12日

                   (文責:平沼クリニック院長 大畑 充)

 

 

 

 

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認知症の予防(認知症と不眠)(2015年12月5(平成会講演から):片山晃医師の講演スライド

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