これからの感染に注意―感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)―

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【感染性胃腸炎とは?】感染性胃腸炎はウイルスや細菌、有害物質などに汚染された食物や水によって引き起こされ、主として下痢・腹痛・発熱・嘔吐などの症状を起す病気です。毎年秋から冬にかけて流行します。一般的にはウイルスによるものは比較的軽症で、重症化する症例の80%以上は細菌性です。平成24年度の横浜市衛生研究所の報告(図1)では、圧倒的に11月~2月に発症患者数は多くなっています。

 【感染性胃腸炎の原因】政府広報オンラインからのデータでは(図2)胃腸炎の原因はウイルス性70.0%、細菌性22.2%、自然毒1.0%、化学物質0.5%、その他1.8%、原因不明4.5%となっています。これらのうち狭義の意味では感染性胃腸炎はウイルス性、細菌性であり、自然毒や化学物質は非感染性胃腸炎と分類されます。また原因食品では、魚介・加工品類が最も多く、肉類、野菜、乳製品などからの感染も多く認められます。夏季には細菌性食中毒(カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなど)が多く、冬季にはウイルス性食中毒(ほとんどはノロウイルス)が多く認められます。 

 【代表的な感染性胃腸炎】

①ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス):(図3、図4):感染性胃腸炎で最も多く認められるのは、ノロウイルスによるもので、11月頃から増加し、1月~2月にピークを迎えます。感染経路はウイルスを蓄積したカキなどの貝類の生食、患者の糞便・吐物からの経口感染、糞便や嘔吐物の乾燥した中に含まれているウイルス粒子が空気を介しての経口感染です。潜伏期間は1~2日で、症状は嘔気・嘔吐、下痢、腹痛が主な症状で発熱は比較的軽度です。症状は通常1~2日で改善傾向となります。軽快後も3日間は便中にウイルス排泄が続くため、患者や周囲の人の厳重な手洗いが必要です。感染予防は、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱、患者の糞便・吐物の処理で、アルコール消毒では死滅しません。消毒には次亜塩素酸ナトリウム液での処理が必要です。一般的な次亜塩素酸ナトリウム液の作り方は500mlのペットボトルを用意し、そのフタ1杯(5ml)のハイター(次亜塩素酸ナトリウム6%)を入れて、あとは水を入れて500mlにすると、1/100溶液(600ppm)が作成できます。ノロウイルスを不活化するのに、600ppmの濃度が必要であり、簡便な作成方法です。

 

②細菌性胃腸炎(図5):細菌性胃腸炎には感染型と毒素型の2つのタイプがあります。感染型は細菌に汚染された食品を食べることにより口から入った細菌が腸で増えて、粘膜の中に進入して症状をおこすもので、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、腸管出血性大腸炎(O157)などです。潜伏期は長く、12時間から3日で、発熱を合併する事が多いのが特徴です。また毒素型は食物についた細菌がそこで増えながら毒素を出して、この毒素を食物とともに口からとってしまうために症状をおこすもので、ブドウ球菌やボツリヌスが代表的です。潜伏期間は短く、1~18時間で、通常は発熱はみとめません。細菌性胃腸炎で、比較的重症化する事が多いのは腸管出血性大腸炎(O157)です(図6)。原因は大腸菌ですが、通常の大腸菌は人や家畜の腸内に存在し、ほとんどのものは無害です。人に下痢などの症状や合併症を起す大腸菌が病原性大腸菌であり、その中でベロ毒素を出して、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒素症候群を起す菌を腸管出血性大腸菌といい、菌の成分により分類され、O-157はそのうちの一つの大腸菌です。牛肉・井戸水・野菜などから感染して3~4日後に血便・腹痛が出現し、発熱は軽度ですが早期治療が重要です。約7%の患者に重症合併症を呈します。予防は75℃, 1分以上の加熱で死滅します。

【感染性胃腸炎の特徴・症状・治療】(図7、図8): 症状は下痢、腹痛、発熱が主症状で、嘔気、嘔吐を伴う事もしばしばです。一般的にウイルス性の感染性胃腸炎の方が軽症です。また病原性大腸菌(O-157)、細菌性赤痢、カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなどによる感染性胃腸炎では血便を伴う事も少なくありません。体温が38℃以上を持続したり、下痢が一日10回以上続いたり血便があったり、脱水、腹痛、嘔吐などの症状が強い場合には重症で、入院加療が必要です。一般的な治療は点滴などで脱水を改善し、整腸剤や抗生剤の投与を行います。強力な下痢止めは病原体の排泄を遅らせるため通常は使用しません。

 【感染性胃腸炎の予防】感染性胃腸炎は予防が最も大切です。予防には①食品の買い方(肉、魚、野菜は新鮮なものを購入し、賞味期限に注意)、②食品の保存の仕方(買い物から持ち帰ったらすぐに冷蔵庫・冷凍庫に保存)、③料理の下準備(手洗いを行い、野菜はよく水洗いをする。室温解凍はせず、解凍したらすぐ料理する)④料理の仕方(加熱するものは十分加熱する。途中で料理をやめる場合には冷蔵庫へ保存し、再調理では十分加熱する)⑤食事の仕方(手を洗い、料理は長く放置せず、早めに食べる)、⑥残った食品の扱い方(時間がたったら捨てる。暖めなおす時には75℃以上にする)などの注意が必要です。家族内で患者さんは出た場合には、手洗いをきちんと行い、タオルは患者さん専用にして、患者さんは浴槽には入らずシャワーとし、吐物や汚物は適切に処理し、感染を広げないようにしましょう(2014年9月6日:平成会講演会から)。                       2014年9月6日  文責:平沼クリニック 院長  大畑 充

カテゴリー: 医療全般   パーマリンク

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