ピロリ菌と胃の話-逆流性食道炎

1.ピロリ菌と胃の話:

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は以前はストレスや鎮痛剤などが主な原因とされてきましたが、最近では潰瘍の発病や再発の大きな要因としてヘリコバクタ・ピロリ菌(以下ピロリ菌)が注目されています。

ピ ロリ菌は大きさが約1ミリの250分の1程度の細菌で、らせん状の形をし、4~8本のべん毛を持っています。通常の細菌は胃液の中の胃酸のため生きている ことは出来ません。しかしこのピロリ菌は「ウレアーゼ」とうい酵素を持ち、胃に中にある尿素という物質からアンモニアを産生します。アンモニアはアルカリ 性なので、胃酸を中和して自分の周囲を中性に近い状態にして生き延びているのです。ピロリ菌はアンモニアを産生したり、様々な有害物質を産生して胃粘膜を 傷害します。

ピロリ菌の感染率は年代とともに上昇し、20歳では20%、40歳では40%、60歳以上では約70~80%といわれていま す。また発展途上国で高く、日本の感染率は先進国の中ではかなり高率です。感染経路は経口感染がほとんどで、口から口への感染(食べ物を子供に、口移しで 食べさせる時の感染が多い)が重要な感染源です。また井戸水からの感染や、ゴキブリなどが媒介する可能性もあります。

現在ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発病・再発とは明らかに関係していることが判っていますが、さらに胃癌や過形成ポリープとの関連も指摘されています。

実際にピロリ菌感染者はピロリ菌非感染者に比べて胃癌の発病率は約2.7倍との報告もありますし、またピロリ菌の除菌により胃のポリープが消失したという報告も沢山あります。

ピロリ菌が感染しているかどうかは内視鏡で行う検査(胃の中の組織を取って、検査液で反応をみたり、顕微鏡で確認する)や尿素呼気反応(尿素の入った液を服用して、呼気中にピロリ菌と反応した物質を測定する方法)、血液や尿の抗体を測定するなど様々な方法があります。

胃 潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんでピロリ菌が検出されたら除菌すべきです。除菌は胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤)1種類と抗生剤を2種類(アモキシ リン、クラリスロマイシン)を1週間服用するのみで、除菌の成功率はおおよそ70~80%程度です。1回目の除菌で除菌できなかった場合には別の方法(プ ロトンポンプ阻害剤1種類と、アモキシリン、メトロニダゾールを1週間服用)があり、この方法での除菌率は約90%程度です。一度除菌されれば再感染は極 めて少なく、約1~2%程度の再感染率と報告されていますが、成人になってからの感染はあまり問題にならないと考えられています。

除菌の副作用は発疹、下痢、味覚障害、肝障害などですが、重篤なものはそれほど多くはありません。除菌が成功した場合には潰瘍の再発率は極めて低くなり、また胃癌の発生を抑えると考えられています。

2.食道疾患―比較的多い「胸やけ」―逆流性食道炎:

食道疾患で比較的多いのが逆流性食道炎です。これは胃液が食道に逆流することによって起こる食道の炎症(ただれ)で、主な症状は胸やけ、胃もたれ、胸の痛み、喉の不快感などです。また物を飲み込んだときにつかえる感じがする場合もあります。

胸やけが1ヶ月以上続くようであれば可能性は高いと考えられます。症状は就寝前の飲食、食べ過ぎ、早食い、脂っこいものを食べた時に起こりやすくなります。

逆 流性食道炎は問診(患者さんからの話)と診察でかなりの確率で診断できますが、一定の年齢以上の方ではやはり食道癌などを否定するためにも、また診断を確 定するためにも胃内視鏡検査(胃バリウム検査では確認が難しい)が必要です。症状は胃酸を抑える薬剤(とくにプロトンポンプ阻害剤)で速やかに改善します が、薬をやめると症状が再発しやすい病気です。

予防は、

①食事習慣の改善:大食い、早食い、食後の就寝を避ける。

②胸焼けをおこしやすい食事を避ける:高脂肪食(フライ、てんぷら、油炒めなど)、甘味食(ケーキ、饅頭など)、酸味の強い果物など。

③生活の注意:食後すぐの横臥、前屈姿勢、強い腹圧のかかる動作(重いものを持ち上げるなど)。

④胸焼けを起こしにくくする就寝姿勢:上半身挙上(ベッドの頭側を高くするなど)、左を下にした睡眠すること、などです。

文責:大畑 充

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脳の動脈硬化の予防

脳梗塞の重要な原因のひとつに動脈硬化があります。高齢化や生活様式(とくに食生活)の欧米化などに伴い,動脈硬化の重症化,若年化が問題視されており,とくにメタボリック症候群と呼ばれる高血圧症,高脂血症,糖尿病,肥満によってその進行は早まります。動脈硬化の初期は自覚症状がないまま潜やかに血管を蝕んでいきます。脳梗塞,心筋梗塞,下肢動脈閉塞,眼底出血などの症状がみられてからでは手遅れです。
動脈硬化の予防には生活習慣の改善が有効で,とくに血圧管理が大切と考えられています。そのためには日常から動脈硬化の早期発見,早期治療を心がける必要があります。

1.脳梗塞にいたる動脈硬化には
・アテローム(粥状)硬化
・細動脈硬化の二つがあります。アテローム硬化では大動脈や頸動脈などの太い血管の内腔に血栓(悪玉コレステロールが一因)が作られ狭くなります。アテローム硬化の程度を知る検査にはキャビや頸動脈エコーがあります。いずれも簡便に短時間で頸部や四肢の血管年齢(血管壁の厚さ,しなやかさ,詰まり具合)が判明します。
細動脈硬化では脳や網膜(眼底)の細い血管が硬くなり,伸縮性が失われ血管閉塞や出血の原因になります。細動脈硬化を知る検査として眼底検査があります。網膜の細い血管を観察でき,また時に眼底出血の有無を確認します。これは脳深部の細い血管の状態を知る手掛かりになります。

2.脳梗塞の前兆として

一過性脳虚血(手足の麻痺やしびれ,呂律不良などが一時的ですぐに回復する脳梗塞の前段階)

かくれ脳梗塞(無症状ですが,脳 CTや MRIの検査で偶然みつかる小さな脳梗塞)に注意する必要があります。とくに一過性脳虚血を経験した 20-40%の人が将来,脳梗塞に進行しますので,できる限り早めの診察,そして予防(薬物療法)が必要です。また,無症状であっても脳梗塞の危険因子(男性 >女性,家族に脳卒中がいる,高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙,肥満,心房細動など)がある場合,定期的に脳の検査( CTまたは MRI)をお勧めします。かくれ脳梗塞が多発すると将来,脳出血や認知症の原因となります。

3.脳梗塞の予防には

・定期的な健康診断
・生活習慣の改善

自分の健康状態(血管年齢など)を把握し,自己管理(血圧測定など)を怠らないように心がける必要があります。同時に禁煙,食生活の工夫,ストレスや過労・睡眠不足をできる限り避ける,便通を良くするなど健康的な日常生活への環境作りも大切です。
残念ながら動脈硬化は 10歳代からはじまり,自覚症状のないまま加齢とともに進行します。メタボはその進行スピードを加速させるので糖尿病,高血圧,高脂血症などの病気の治療とともに共通の基盤である内臓脂肪を減少させることが大切です。
一般に内臓脂肪は比較的容易にエネルギーとして燃焼する特徴があるため,日常の食事や運動を心掛ければ内臓脂肪を減少させることは十分に可能です。現体重またはウェスト周囲径のマイナス 5%を目標に 3~6ヶ月かけて緩やかな減量を継続していきましょう。
メタボにならない秘訣として①バランスの良い食事と腹八分目 ②日常的に運動を継続 ③禁煙④ウェスト日記(体重日記)などおすすめします。
とくに食事日記によって食習慣を確認して問題点(カロリー,脂肪分,塩分など)を具体化するとより効果的です。内臓脂肪がたまりやすい食事(高脂肪食,高ショ糖食,高カロリー食,低線維食)を控えて薄味,お酒も控え目が良いでしょう。
毎日できる運動としてウォーキング(少し早歩き)がおすすめです。習慣的に続けることが重要で1日2割の歩数アップを目安に徐々に増やして1日1万歩を目指しましょう。なるべく乗り物を控えて通勤時間を運動時間として利用しましょう。
ウェスト日記は減量の意識改革と努力継続に役立ちます。ウェスト径の減少に成功すれば,達成感が得られメタボ解消のやる気が高まります。

文責:片山 晃

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インフルエンザとは?

1.普通感冒(かぜ)について:

朝夕は随分と寒くなってきており、かぜも流行ってきています。平沼診療所ではすでにインフルエンザワクチンの接種が開始となりました。今回はインフルエンザとその予防についてお話します。

一般に「かぜ」と呼ばれるものは、かぜ症候群あるいは感冒症候群として総称され、上気道(鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭等)に対して急性に発症する炎症性疾患です。通常、成人では年に2~4回、子供は5~9回も罹患すると言われています。症状はのどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻閉、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感などで、潜伏期間は通常2~5日です。感染経路はくしゃみや感染者との接触、感染者が使用したタオルなどの生活用品等と考えられています。かぜの原因の80~90%はウイルスで、その他には細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどがあります。かぜ症候群の病原ウイルスは下記の表に示しますように200種類以上発見されています。このうち秋と春に多いライノウイルスと冬に多いコロナウイルスによるものが50%以上を占めるといわれています。また冬にはノロウイルスやロタウイルスによる胃腸症状を主とするかぜもよくみられます。これら中でインフルエンザウイルスは、伝染性が強く症状が重いため、しばしば世界的な流行が問題となっています。

かぜ症候群の病原ウイルス

インフルエンザウイルス(A型、B型、C型)

パラインフルエンザウイルス  4型

RSウイルス
1型

アデノウイルス 40型

ライノウイルス 100型以上

コックサッキーウイルス(A群1-24型、B群1-6型)

エコーウイルス 1-34型

コロナウイルス 3型

レオウイルス 3型

2.インフルエンザとは?:

インフルエンザウイルスによる感染症で、症状は風邪と似ています。しかし通常の風邪は鼻汁、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が主な症状ですが、インフルエンザはこれらに比べ、比較的急速に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛や胃腸症状などの全身症状が著明な点が特徴です。軽いものは「かぜ」と区別はできません。38℃以上の発熱があり、「いつもの風邪より身体が辛い」といった症状があれば強く疑います。感染は飛沫感染や接触感染で、潜伏期は1~3日です。大多数の人は特に治療を行わなくても、1-2週間で自然治癒します。症状はA型の方がB型に比べて強いことが多く、B型の方は薬が効きにくいといわれています。流行期間は11月~4月で、前半はA型が多く、後半はB型が多いのが一般的です。日本では2002-2003年にかけて推定約1000万人が罹患しました。致死率は0.05%程度ですが、ほとんどは65歳以上の高齢者です。また小児のインフルエンザ脳炎は年間100~300例発症し、その死亡率は30%と高い。

3.インフルエンザの種類:

インフルエンザウイルスはA、B、Cの3型に分けられますが、A型はさらに数十種類に分類されますが人間界に存在するのはH1N1,
H2N2, H3N2の3つです。B型やC型はそれぞれ1種類のみです。現在世界中で流行しているのは2種類のA型(A型香港(H3N2)、A型ソ連(H1N1))および1種類のB型です。このようにA型が数種類あるため、人によっては1シーズンA型ソ連にかかった後、A型香港にかかったり、A型にかかった後、B型にかかったりすることがあります。インフルエンザウイルスはウイルスそのものが変異を続けるため、数年ごとに大流行をもたらす事になるわけです。10~40年周期では新型ウイルスが出現して世界中に大被害を及ぼしてきました。このような変異のため、毎年流行に合わせてワクチンも作り替えなければならないわけです。同じインフルエンザウイルスの中でもC型ウイルスは変異しにくいため、一度感染すると一生に渡る免疫ができ、あまり怖くないウイルスといえます。しかしA型ウイルスは症状が重い上、変異しやすいため、数年ごとに世界的な大流行をもたらす手強いウイルスですで、これは人のインフルエンザウイルスがアヒルやブタなどに感染して、その体内で遺伝子の組み替えが起こるためだと考えられています。インフルエンザの流行がアジアやロシアから始まるのが多いのも、アジアやロシアではアヒルを飼う農家が多く、アヒルと人のインフルエンザウイルスが混じり合いやすい環境にあるためと考えられています。またインフルエンザウイルスは低温・低湿度の環境を好みます。

ウイルスの型

ウイルスの変化の程度

症状

A型

非常に変化しやすい

最も重い

B型

変化しにくい

重い

C型

非常に変化しにくい

普通

4.診断:

色々な方法(ウイルスの分離や血清抗体価など)がありますが、迅速に診断するためには、迅速キットが最も有用です。通常検体は咽頭や鼻腔から採取しますが、感度は鼻腔の方が高いといわれています。しかしキットの感度は50~80%で、迅速キットで陰性でもインフルエンザの可能性はあるわけです。診断キットは鳥インフルエンザ(H5N1)には役に立ちません。

5.治療:

A型にはアマンタジン(シンメトレル:パーキンソン病の治療薬)も有効ですが耐性や副作用が多くあまり使用されません。日本では、A型、B型の両方に効く、タミフル(飲み薬)、リレンザ(吸入薬)が使用されていますが、発病48時間以内の服用が必要です(タミフルは小児用ドライシロップがありますが1歳未満には使用しない)。しかし欧米諸国では自然に治癒する疾患であり、あまりこれらの薬は使用されていません。さらに薬を服用しても発熱期間が1~2日短縮されるだけというデータもあります。治療には十分な休養と、水分補給が必要です。発熱に対してはインフルエンザ脳炎の危険性を少なくするために解熱剤としてはアセトアミノフェン(カロナールなど)を使用します(15歳未満の小児に対してはアスピリンなどのサリチル酸、ボルタレン、ポンタールは基本的には禁止。成人でも基本的にはアセトアミノフェン(カロナールなど)を使用)。タミフル、リレンザは妊娠中の投与に関しては安全性は確立されておらず、有益性が危険性を上回る場合には投与します。授乳中の患者さんは、乳汁中に薬が移行するので、投薬中は授乳を避けるようにします。リレンザはタミフルに比べ耐性が少なく、タミフル耐性ウイルスにも有効。タミフルやリレンザは鳥インフルエンザにも有効。タミフルの使用期限は5年間。タミフルの耐性出現率は成人では1%程度、小児では5~20%との報告。

6.予防:

ワクチン接種が最も有効です。1回法と2回法では有効性が差がないという報告もありますが、2回法の方が抗体価が高いとの報告もあり、13歳以下の患者や65歳以上の患者、呼吸器疾患・心疾患・糖尿病患者などでは2回法を一応薦めます。ワクチンの効果が現れるまでには約2週間程度かかり、予防効果はおよそ5ヶ月間ですので、可能な限り12月上旬までに接種することを勧めます。報告によるとワクチンは65歳以上の健康な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%に死亡を阻止する効果があったとされています。ワクチンは当然、風邪やSARS、鳥インフルエンザには効果はありません。また感染したら、マスクも有用です(飛沫感染)。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使ったりして適度な湿度(50~60%)を保ちましょう。ワクチンは不活化ワクチンであり、胎児に影響はないとい考えられており、妊婦は接種不適当者には含まれていませんが、妊婦に対しては十分な調査がなく、妊娠初期には避けること、利益が危険性を上回る場合に接種すべきです。母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません。また精子への影響はないため、妊娠希望のカップルの男性にも問題はありません。またワクチンによってインフルエンザを発症することはありません。ワクチンは鳥インフルエンザや新型インフルエンザには無効。手洗い・うがいも大切な予防法です。

7.インフルエンザに罹患したら何日休ませるか?:

一般的には発病後3~5日間ウイルスを排出するといわれています。この間患者は感染力があると考えられます。抗インフルエンザ薬の投与により発熱期間は1~2日間短縮されます。学校保険法では「解熱した後、2日間は出席停止」としていますが、職場復帰に関しては定まったものはなく、やはり一般的には解熱後2日間は自宅療養を勧めます。

8.鳥インフルエンザ

鳥インフルエンザ(H5N1)は鳥から人への感染はありますが、今のところ人から人への感染はありません。しかし将来的にはウイルスが変異し、人から人への感染を起こす可能性はあります。現在のところ、診断キットやワクチンは無効ですが、タミフルやリレンザなどと治療薬は有効です。

9. インフルエンザ患者の病室での管理は?

インフルエンザの患者さんが部屋の中にいた場合、患者さんの飛沫(咳やくしゃみと共に出る)の中にインフルエンザウイルスがいる可能性がありますが、基本的にはインフルエンザは飛沫感染であり、飛沫というのは1~2メートル以上は飛びませんし、患者さんがマスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えられます。また、手指を介した接触感染もありますので、手洗いは重要です。しかし、狭い気密な部屋などでは、比較的長くウイルスが浮遊することもありますので、時々換気をすること、部屋の湿度を適度に保つことなどは意義があります。インフルエンザウイルスは、ほとんどの消毒薬に弱く、十分な湿度があれば生存期間も短いので、通常の清掃で十分だと考えられますが、あきらかな目に見える呼吸器分泌物による汚染がある場合には、通常の消毒薬により消毒しておくほうがよいでしょう。インフルエンザを発症中に使用した衣服にはウイルスが付着していることが予想されますが、これまでの知見ではこれから感染を起こすことはまれだと考えられています。使用後は、通常の洗濯をして日なたに干しておけばウイルスの感染性は消失します。

文責:大畑 充

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気をつけよう!-食中毒―

夏本番が到来しました。この時期には、食中毒の発生が増加し、食事には注意が必要です。

「食中毒」は汚染された食べ物や有害物質の混じった食べ物よって引き起こされ、主として下痢・腹痛・発熱・嘔吐などの急性胃腸炎症状を起す病気です。厚生労働省の統計によりますと、食中毒の発生数は、7月から9月に最も多いのですが、12月から1月にも比較的多くみられます。また原因食品では、魚介・加工品類が最も多く、肉類、野菜、乳製品などからの感染も多く認められます。一般的に食中毒は飲食店で発生することが多いのですが、一般家庭からの発生も全体の約20%程度を占めます。食中毒の種類は感染性(細菌、ウイルス、寄生虫など)と非感染性(自然毒、化学物質など)に大別されますが、そのほとんどは感染性食中毒です。夏季には細菌性食中毒(カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなど)が多く、冬季にはウイルス性食中毒(ほとんどはノロウイルス)が多く認められます。

各種細菌性食中毒の特徴

夏に多い代表的な細菌性直中毒の原因は、カンピロバクターでは生の鶏肉や鳥レバーなど、サルモネラでは生の肉類や生卵など、腸炎ビブリオでは魚介類の生食など、病原性大腸菌では菌に汚染された食肉や野菜などです。また従来は冬の最も代表的な食中毒の原因であったノロウイルスは、最近では夏でも発生し、その原因はカキ等の二枚貝の生食などです。

症状は下痢、腹痛、発熱が主症状で、嘔気、嘔吐を伴う事もしばしばです。また病原性大腸菌(O-157)、細菌性赤痢、カンピロバクター、サルモネラなどによる食中毒では血便を伴う事も少なくありません。体温が38℃以上を持続したり、下痢が一日10回以上続いたり血便があったり、脱水、腹痛、嘔吐などの症状が強い場合には重症で、入院加療が必要です。一般的な治療は点滴などで脱水を改善し、整腸剤や抗生剤の投与を行います。強力な下痢止めは病原体の排泄を遅らせるため通常は使用しません。

食中毒は予防が最も大切です。予防には①食品の買い方(肉、魚、野菜は新鮮なものを購入し、賞味期限に注意)、②食品の保存の仕方(買い物から持ち帰ったらすぐに冷蔵庫・冷凍庫に保存)、③料理の下準備(手洗いを行い、野菜はよく水洗いをする。室温解凍はせず、解凍したらすぐ料理する)④料理の仕方(加熱するものは十分加熱する。途中で料理をやめる場合には冷蔵庫へ保存し、再調理では十分加熱する)⑤食事の仕方(手を洗い、料理は長く放置せず、早めに食べる)、⑥残った食品の扱い方(時間がたったら捨てる。暖めなおす時には75℃以上にする)などの注意が必要です。家族内で患者さんは出た場合には、手洗いをきちんと行い、タオルは患者さん専用にして、患者さんは浴槽には入らずシャワーとし、吐物や汚物は適切に処理し、感染をひろげないようにしましょう。

食中毒の症状が出たら、早急に医療機関を受診し治療を受けましょう!

文責:大畑 充

 

 

 

 

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胃と腸のはなし

1.ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍、胃癌:

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は以前はストレスや鎮痛剤などが主な原因とされてきましたが、最近では潰瘍の発病や再発の大きな要因としてヘリコバクタ・ピロリ菌(以下ピロリ菌)が注目されています。

ピロリ菌は大きさが約1ミリの250分の1程度の細菌で、らせん状の形をし、4~8本のべん毛を持っています。通常の細菌は胃液の中の胃酸のため生きていることは出来ません。しかしこのピロリ菌は「ウレアーゼ」とうい酵素を持ち、胃に中にある尿素という物質からアンモニアを産生します。アンモニアはアルカリ性なので、胃酸を中和して自分の周囲を中性に近い状態にして生き延びているのです。ピロリ菌はアンモニアを産生したり、様々な有害物質を産生して胃粘膜を傷害します。

ピロリ菌の感染率は年代とともに上昇し、20歳では20%、40歳では40%、60歳以上では約70~80%といわれています。また発展途上国で高く、日本の感染率は先進国の中ではかなり高率です。感染経路は経口感染がほとんどですが、明らかにはされていません。

現在ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発病・再発とは明らかに関係していることが判っていますが、さらに胃癌やポリープとの関連もある可能性が示されています。欧米ではすでに胃癌の重要な要因の一つにピロリ菌があげられております。また胃ポリープの中にはピロリ菌を駆除(除菌)することで、ポリープが縮小あるいは消失したとの報告もあります。

ピロリ菌が感染しているかどうかは内視鏡で行う検査(胃の中の組織を取って、検査液で反応をみたり、顕微鏡で確認する)や尿素呼気反応(尿素の入った液を服用して、呼気中にピロリ菌と反応した物質を測定する方法)、血液で血清抗体を測定するなど様々な方法があります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんでピロリ菌が検出されたら除菌をするのが良いと考えられます。

除菌は胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤)1種類と抗生剤を2種類(アモキシリン、クラリスロマイシン)、を1週間服用するだけです。除菌の成功率はおおよそ70~80%程度です。一度除菌されれば再感染は極めて少ないと考えられています。除菌が成功した場合には潰瘍の再発率は極めて低くなります。

2.食道疾患―比較的多い「胸やけ」―逆流性食道炎:

食道疾患で比較的多いのが逆流性食道炎です。これは胃液が食道に逆流することによって起こる食道の炎症(ただれ)で、主な症状は胸やけ、胃もたれ、胸の痛み、喉の不快感などです。また物を飲み込んだときにつかえる感じがする場合もあります。胸やけが1ヶ月以上続くようであれば可能性は高いと考えられます。

症状は就寝前の飲食、食べ過ぎ、早食い、脂っこいものを食べた時に起こりやすくなります。診断は問診(患者さんからの話)と診察でかなりまでつけることができますが、一定の年齢以上の方ではやはり食道癌などを否定するためにも、また診断を確定するためにも胃内視鏡検査(胃バリウム検査では確認が難しい)が必要です。症状は胃酸を抑える薬剤(とくにプロトンポンプ阻害剤)で速やかに改善しますが、薬をやめると症状が再発しやすい病気です。

3.大腸ポリープと大腸癌:

大腸ポリープの多くは小さいうちは腺腫という良性の腫瘍ですが、大きくなると共に癌化する可能性がでてきます。もちろんすべてが癌化するわけではなく、小さいものはそのまま変化しないこともあります。便潜血反応などで陽性の方はポリープの可能性がありますので、かならず大腸精密検査(大腸バリウム検査あるいは大腸内視鏡検査)が必要です。

精密検査でポリープが発見されたら、内視鏡で切除するのが一般的です。癌化しても小さなもので、粘膜の深くまで癌が入り込んでいなければ手術をせずに内視鏡で取りきることも可能です。大腸癌は多くはポリープから進展しますが、一部はポリープを経ずに直接正常粘膜から発生する癌(de Novo癌)があります。

いずれにしろ便潜血検査による大腸癌健診を受けることが大切ですが、もちろんこれですべてが診断できる訳ではありませんので、症状があるようなら直接大腸精密検査を受けてください。

4.機能性消化管疾患:

機能性消化管疾患という病名はあまり聞きなれないと思いますが、一般の患者さんの中ではかなり多い疾患の一つです。

①消化管に由来すると考えられる症状(腹痛、便通異常など)が1年間のうち、12週以上の期間にわたって出現。

②症状を説明するような器質的所見がない。

③症状を説明するような生化学的異常がない。

の3つが重要なポイントですが、通常2週間のうち4回程度このような症状があれば疑います。上腹部が症状の中心の場合には機能性胃腸症(胃痛、胃部不快感、胃もたれ、嘔気など)が考えられ、また下腹部が症状の中心の場合には過敏性結腸症候群(下腹部痛や下痢・便秘などの便通異常)と考えられます。

通常、体重が減ったり、便に血が混じったり、夜間に腹痛で目覚めるようなことはありません。症状から診断は比較的簡単ですが、診断を確定するためには胃・大腸の検査が必要です。これらの疾患はある意味「ストレス病」と考えられており、ストレスや過労で悪化します。日本人(成人)の約10~20%にこのような症状が認められます。治療は各種消化剤、制酸剤、胃腸機能改善薬などで行いますが、症状が強い場合や改善しない場合には精神安定剤や抗うつ剤などを使用することもあります。

以上のように食道、胃・十二指腸、大腸に関する疾患についてお話をしましたが、このような消化器系の疾患はやはり健診を含めた画像検査による早期発見が最も大切です。皆さん是非とも健診は受けてください。

文責:大畑 充

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