「インフルエンザの予防と各種予防接種の話」(12月7日・平成会・健康教室より)

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 またインフルエンザの流行の季節が到来しました。今回はインフルエンザに関する話とその予防、またその他各種予防接種の意義について、お話しさせていただきます。

【インフルエンザの症状】インフルエンザと通常の風邪の大きな違いは、インフルエンザは発病が突然で、高熱、頭痛や全身の痛みを伴い、いわゆる風邪症状(のどの痛み、鼻水、咳や痰など)はこの後に出現してくることが多いという点です。大多数の人は特に治療を行わなくても、1~2週間で自然治癒しますが、抗インフルエンザ薬の投与により、発熱期間は短縮し、重症化も予防されることがわかっています。流行期間は11月~4月ですが、2009年に新型インフルエンザが発生して以来、小規模ながら、1年中発生しています。

【インフルエンザの種類】(図1、図2) インフルエンザにはA型、B型、C型の3種類があります。このうちB型とC型は1種類ですが、A型は、ウイルス遺伝子の表面にある赤血球凝集素(HA:haemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NA:neuraminidase)という糖蛋白(人間の指紋のようなものと思って下さい)の組み合わせによって、数十種類のウイルス亜型が存在します。HAはH1~H16の16種類、NAはN1~N9の9種類あり、これらの組み合わせにより多種類のウイルスの亜型が存在するわけです。2009年に大流行したいわゆる新型インフルエンザはH1N1の変異株でしたが、新型インフルエンザワクチンの接種や、多くの国民が新型インフルエンザに羅患したことにより、多数の方が免疫を獲得したため、通常の季節型インフルエンザと異なる流行は確認されておりません。このため2011年3月に様々な規制のある「新型」という名称は廃止され、インフルエンザ(H1N1)2009と変更され、通常の季節性インフルエンザと同等に扱われることなりました。2013年3月、中国で鳥インフルエンザが発生し、H7N9亜系A型インフルエンザによる流行と判明しました。現在の所ヒトからヒトへの直接感染は確認されていませんが、、日本人にはほとんどこのウイルスに対する免疫は無いと考えられています。原因となる動物(自然宿主)は不明ですが、市場で売られている生きている鳥類の可能性が高いと考えられています。これまでに感染者は136人で、45名が死亡したとWHOに報告されています。 

 

【インフルエンザの予防】(図3、図4)インフルエンザの予防は帰宅時のうがい、手洗い、流行前のワクチン接種、適度な湿度の保持、十分な休養と睡眠が重要です。特に高齢者や妊婦は、インフルエンザに罹患しますと、重症化することが多く、ワクチンの接種をお勧めします。図3に示しましたように、インフルエンザ患者の死亡者は大多数が65歳以上の高齢者です。妊婦や授乳者へのワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けたことによって流産や先天異常の危険性が高くなるという報告はありません。また母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません。またインフルエンザのワクチンと他のワクチンの接種間隔は図4に示した通りです。

【予防接種とは?】 様々な感染症は、細菌やウイルスが体内に侵入し、その力が身体の免疫力を上回った場合に発病します。従って免疫力が勝れば感染症は発症しません。このような免疫力をあらかじめ人為的に投与する事が予防接種であり、その手段がワクチンです。予防接種は、各種の病原菌に対して免疫を持たない場合や免疫の増強効果(ブースター効果)を目的とする者に対して行われるもので、感染予防、発病予防、重症化予防、感染症のまん延を予防する事を目標とします。

【ワクチンとその種類】(図5)  ワクチンとは、人間が本来持っている「病原体に対する抵抗力(免疫)」のシステムを利用して、これらのさまざまな感染症に対する「免疫」をあらかじめ作らせておく製剤のことです。ワクチンには病原性や毒性を弱めた病原体そのものを使用する「生ワクチン」、様々な処理によって病原性や毒性をなくした病原体やその成分で作成した「不活化ワクチン」、病原体の毒素のみを取り出し、その毒性をなくし、免疫原生のみを残したトキソイドがあります。生ワクチンは免疫力が強く、効果も長期間持続しますが、不活化ワクチンやトキソイドは効果の持続は短く、数回の接種が必要です。

【肺炎球菌ワクチン】肺炎は平成23年度の死亡原因のなかで、51年ぶりに第3位となりました。この肺炎の原因の約40%を占めるのが肺炎球菌です。肺炎球菌は抗生剤が効きにくい多剤耐性肺炎球菌が増加(30~50%は抗生剤に耐性)しています。肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)は80種類ある肺炎球菌のうち、感染機会の多い23種類の肺炎球菌に対して有効であり、1回接種で5年以上有効とされています。65歳以上の高齢者には接種が推奨されます(図6)。

 【帯状疱疹に対するワクチン】水痘(水ぼうそう)ワクチン:水痘のウイルスと、帯状疱疹ウイルスは同じウイルスであり、水痘ワクチンを打つことによって、帯状疱疹の免疫力が上がるといわれています(アメリカでは60歳以上で推奨され、発症・症状が50%程度になる。日本では現在の所、適応はないが、接種は可能)(図7)。 

 MR(麻疹・風疹)ワクチン】2013年は風しんが大流行しました。妊婦が風しんにかかると、胎児に奇形(心臓病、難聴、白内障など)を起こすことがあります。大人になってかかると、重症化(脳炎や血小板減少性紫斑病など)することがあります。また麻しんワクチンも1回接種であれば、免疫力が落ちており、風しん、麻しん両者の接種が望ましいと考えられます(図8)。

 【子宮頸癌ワクチン】 子宮の入り口部分(子宮頸部)にできるがんで、若い女性(20歳から39歳)にかかる癌の中では乳癌に次いで2番目に多い癌です。子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。HPVには100種類以上のタイプがあり、そのうちHPV16型・18型が子宮頸癌の50~70% とされています。主に性行為によって感染し、約50%の女性が生涯に一度は感染し、感染しても多くは自然排出されます。子宮頸癌の約50%はワクチンで予防できます。ワクチンは2種類あり、2価(HPV16型・18型)、4価(16型、18型と尖圭コンジローマの主な原因となる6型、11型を含む)があります。しかし現在は、厚生労働省は積極的には推奨していません(持続的な痛みを訴える重篤な副反応の報告がある(100~数百万接種に1回)。各個人が有効性とリスクを十分に理解した上で、接種を決定すべきと考えられます(図9)。  

 B型肝炎】(図10、図11)1995年頃までは成人がB型肝炎に罹患した場合、約30%の人が急性肝炎を発症します。そのうち約2%が劇症肝炎となり、劇症肝炎を発症すると約70%が死亡します。しかしほとんどの人は治癒し、慢性化(キャリア化)する人はごく一部でした。それはこの頃までのB型肝炎ウイルスの遺伝子型が、日本本来の遺伝子型Bと遺伝子型Cがほとんどであったためです。しかし1996年以降、成人になって感染しても慢性化しやすい欧米や中央アフリカ型である遺伝子型AのB型肝炎が増加してきており、慢性化する確率が高くなっており、注意が必要です。この予防にはワクチン接種が有効です。ワクチン接種は①母子感染予防②成人感染予防③汚染事故感染予防(主に医療従事者が、注射や採血の際に起こす針事故)の3種類がありますが、その接種方法は図11に示しました。

 季節がらインフルエンザワクチンの接種をお勧めします。またその他各種のワクチンの意義を理解して、必要と感じられるワクチンの接種をお考えください。

                       文責:2013年12月7日 平沼クリニック院長 大畑 充

 

 

 

 

 

 

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