感染性胃腸炎が大流行ーその対策ー

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 感染性胃腸炎が大流行ーその対策ー
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed

大流行の感染性胃腸炎に注意!(過去5年間で最大の流行)

 【感染性胃腸炎とは?】 感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌の感染によって、嘔気・嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状を呈する感染症です。原因はノロウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルスなどのウイルスや、サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、キャンピロバクター、ブドウ球菌などの細菌の感染です。夏には細菌性のものが多く見られますが、秋から春、特に冬の感染性胃腸炎はウイルス性、主にノロウイルスによるものがほとんどです。食中毒は夏に多いと思われがちですが、冬にも大流行しています。ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、食品を介して感染する食中毒の形と食品を介さないで感染する場合とがあります。横浜市では2013~2014年の冬は過去5年間で最大の流行です。

 【ノロウイルスとは?】 ノロウイルスは1968年にアメリカオハイオ州のノーウオ―クで、集団発生した食中毒で発見されたウイルスで、小さな球形をしたウイルスで、その大きさはわずか38ナノメートル(ナノは1mmの100万分の一)という小さなもので、通常の顕微鏡では見えません。また人間の体内以外では増殖しません。

 【ノロウイルスの感染経路】 ノロウイルスの感染経路はほとんどが経口感染(口から体内に入って感染)です。このウイルスは汚染された食品(主に生の貝類)や、感染した患者が吐いたものや便の中に大量に含まれています。感染性が強く、数百個のウイルスを口にいれるだけで感染すると考えられています。東京都健康安全研究センターでの実験では、吐物を1mの高さから落下させると半径2m程度まで飛散すること、80cmの高さから落下させるとウイルスは1時間後も空気中から検出されたと報告しています。現在のところ、感染経路は以下のように考えられています。①ウイルスに汚染された貝類などを、生あるいは十分に加熱しないで食べた場合  ②調理に使用した器具がウイルスに汚染されていたり、感染した人が食品を触ったりすることによって、ウイルスの汚染された食品を食べた場合  ③感染者の吐物や便を触ることによって感染したり、これらが消毒されないまま長く留まって 空気中に飛んで、これを吸い込んで感染する場合

 【ノロウイルス感染の症状】 感染すると1~2日で発症します(もちろん発病しないこともあります)。主な症状は嘔気・嘔吐、下痢、腹痛、発熱などで、発熱は軽度のことが多いようです。症状は通常2~3日で改善します。下痢や嘔吐により急激に水分を失いますので、高齢者や乳幼児では脱水症状に注意が必要です。

 【ノロウイルスの診断】 診断は一般的には臨床症状から診断しますが、原因がノロウイルスかどうかは、糞便の抗原を調べる迅速キットが使用されています。検出感度は約80%程度です。また保険で検査ができるのは、重症化しやすい3歳未満の乳幼児と65歳以上の高齢者のみです。その他の年齢の患者さんが検査する場合には自費となります。

 【ノロウイルス感染の治療】 ノロウイルスに効果のある抗ウイルス薬は残念ながらありません。主な治療は市販のイオン飲料などで十分な水分を補給することです。嘔吐が強く水分が取れない場合には受診して点滴などが必要です。下痢止めは体内にウイルスを留まらせ、回復を遅らせる可能性があるため、なるべくは使用しません。回復してからもしばらくは患者の便からはウイルスは検出されます。

 【ノロウイルス感染の予防】 インフルエンザウイルスとは異なり、残念ながらアルコール消毒では死滅しません。消毒には薄めた市販の塩素系漂白剤(通常は5から10%次亜塩素酸ナトリウムで、50倍から100倍に薄めて使用)やクレベリンを使用します。吐物や便を触るときには手袋を使用し、吐物のついた場祖は塩素系漂白剤をつけたペーパータオルをかぶせて消毒します。日常の予防方法としては、食事前やトイレの後には、石鹸でしっかりと手を洗うことが重要です。また食品中のウイルスは85℃以上で1分間で死滅するので、加熱して食べることです。

 【学校保健安全法での取り扱い】 学校保健安全法では、出席について明確には定められた疾患ではありません。登園・登校は、嘔吐・下痢がおさまるなど、患者さんの体調の回復を持って一般的には許可します。しかし症状が消失した後も、しばらくは便中にウイルスが排出される可能性があるため、回復後も十分な手洗いが必要です。

カテゴリー: 医療全般   パーマリンク

コメントは受け付けていません。