『生活習慣病をよく知り、予防と早期発見で健康生活!』(平成26年3月8日 平成会総会記念講演から)

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 『生活習慣病をよく知り、予防と早期発見で健康生活!』(平成26年3月8日 平成会総会記念講演から)
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed

 平成26年度の平成会の年間テーマは「生活習慣病をよく知り、予防と早期発見で健康生活」です。生活習慣病とは過去には「成人病」とも呼ばれていました概念で、体の負担になるような生活習慣を続けることによって、引き起こされる病気のことです。代表的な疾患は「肥満」、「高血圧」、「脂質異常症」、「糖尿病」です(図1、図2)。以前は、成人がかかりやすかったのですが、食生活や生活習慣の変化によって、病気の低年齢化が進み、今や子供でもかかるほどです。   これらの生活習慣病は、初期段階では自覚症状が出にくいものもあり、気がつかずに放っておくと心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こし、死につながる可能性があります。我が国の死亡原因を見ますと、1位が悪性新生物(癌)、2位が心疾患、3位が肺炎、4位が脳血管疾患です。さらにこれら生活習慣病はその疾患をいくつも同時に合併していますと、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症の危険性が増加します。生活習慣病が全くない人の危険を1としますと、生活習慣病を1つ罹患している方は5.1倍、2つ罹患している方は9.7倍、3~4つ併発している方はなんと危険は30倍以上となります。我が国の死因のうち、心疾患、脳血管疾患はおよそ全死因の約3分の1を占め、その原因は生活習慣病です。従って、この生活習慣病をよく知り、予防・早期発見を行うことが、健康を保ち、「元気で長生き」をするための最も重要なことであると思います。

 様々な病気が発病する原因には①加齢を含めた「遺伝的要因」、②病原体、有害物質、ストレスなどの「外部環境要因」、③食習慣や運動習慣といった「生活習慣要因」の3つにわけることができます(図3)。生活習慣病はまさにこの③による典型的疾患と言えます。また日本人は農耕民族であり、飢餓の時代に生存に有利であった体質、つまり「倹約遺伝子」を持つ頻度は欧米人に比べて高率と報告されています。このため日本人は少しでも太ると、生活習慣病を発症しやすいと考えられています(図4)。

 

 【肥満】

 肥満は体内の脂肪が一定以上になった状態のことで、肥満の判定は通常、身長と体重から計算されるBMI(Body Mass Index:肥満指数)で行われます。BMI(=体重(kg)/(身長(m)×身長(m)))が25以上の場合を肥満と判定し、これに肥満に伴う健康障害を合併した場合に「肥満症」といいます。厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」(平成23年度)によると、日本人の肥満の割合は男性30.3%、女性21.5%となっています。年代別にみると、男性では40歳代が34.8%と最も高く、次いで50歳代が33.4%となっています。一方、女性は年齢が上がるにつれて肥満の割合が高くなり、70歳以上で26.4%と最も高くなっています。また肥満には内臓肥満型(りんご型:腸間膜などに脂肪が蓄積され、ウェストのあたりが太るタイプで男性に多い)と皮下脂肪型(洋なし型:下腹部や太もも、お尻などに脂肪がつくタイプで女性に多い)の2つのタイプに分かれ、内臓肥満型のタイプが危険な肥満と考えられています(図5)。肥満の予防は、食事、運動、禁煙が重要です。

 

 【高血圧】

 血圧は血管内の圧力のことで、高血圧とは動脈に異常に高い圧がかかる状態です。基準は基本的には収縮期血圧(いわゆる「上の血圧」)140mmHg以上あるいは拡張期血圧(いわゆる「下の血圧」)90mmHg以上の場合(家庭血圧ではこれらの値より5mmHgを差し引いた値)を高血圧と言います。平成23年国民健康・栄養調査報告によりますと、収縮期血圧が140mmhg以上の高血圧患者の割合は男性36.9%、女性27.4%です。治療の目標値は数年に1回日本高血圧学会からガイドラインにより示され、2014年のガイドラインでは図3のように決定される予定です(今後変更があるかもしれませんが、現状ではこの値です)。高血圧の予防は、①食塩制限(目標1日6g未満)、②食塩以外の栄養素(野菜・果物・魚を積極的に摂取、コレステロ-ルを控える)、③適正体重の維持(目標BMI 25未満)、運動(中等度の有酸素運動を毎日30分以上が目標)、④節酒(エタノール換算で男性20~30mL/日、女性10~20mL/日以下)、⑤禁煙であり、これらで改善しない場合には、投薬を受けて血圧をコントロールすることが必要です。

 

【脂質代謝異常症】

 脂質異常症とは、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪が多過ぎる病気です。中性脂肪やコレステロールが高い脂質異常症患者は潜在患者も入れると、約2,200万人と推定されています(平成12年厚生労働省循環器疾患基礎調査)。脂質異常症はLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl未満、中性脂肪(トリグリセリド)が150mg/dl以上の場合で、予防は食事と運動です。

 【糖尿病】

 糖尿病患者は平成19年の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」が890万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」が1,320万人であり、全体で約2,200万人と推定されています。さらにその約40%の患者は未治療と考えられています。1955年当時と比較すると、なんと30倍以上に増加し、まさに国民病と考えられます。その予防はやはり食事と運動につきます。また日本糖尿病学会では平成25年4月からHbA1cの値をこれまでの日本の基準値(JDS:Japan Diabetes Society)から国際基準値(NGSP:National Glycohemoglobin Standardization Program)へと変更し、HbA1cが6.5%以上を糖尿病と診断する事になりました。またこれに伴って、糖尿病治療におけるHbA1cの目標値を図4のように改定しました(図7)。

 

      生活習慣病をよく知り、予防と早期発見で健康生活! を目指しましょう!

             平成26年3月8日 平沼クリニック院長 大畑 充

カテゴリー: 医療全般   パーマリンク

コメントは受け付けていません。