熱中症とその予防(「産業医だより」から)

 私は現在数社の産業医を嘱託しております。定期的な衛生委員会への出席と、「産業医だより」を発行し、各社の社員の健康管理を推進しております。今回はその産業医だよりをドクターコラムに掲載します。

~ 産業医だより ~   2017年6月~8月

【神奈川労働局HPから】

1.熱中症とは?

 高温の環境にさらされたり、運動などによって、体の中でたくさんの熱を作ることによって、体温調節が不良となり、体の不調をきたす病気です。熱中症は気温の高い夏季に発生が集中しており、重症になると死に至る危険性の高い病気ですが、予防法を知っていれば防げますし、応急処置を知っていれば救命できます。原因は①熱波により高齢者に起こるもの。②幼児が高温環境で起こるもの。③暑熱環境での労働で起こるもの。④スポーツ活動中に起こるもの、などがあります。また熱とともに、筋肉障害や脱水の影響も大きいことが特徴です。

 上の図は神奈川労働局HPから抜粋しました熱中症の発生状況と死亡者数です。全国的には、厚生労働省HPを拝見しますと、平成26年は死傷者数432名(死亡者12名)、平成27年は死傷差数464名(死亡者29名)、平成28年は死傷者数462名(死亡者12名)と報告されています。 

2.熱中症はどうして起こるのでしょうか?

 もともと私たち人間は、運動や日常生活で身体を維持することで常に熱が産生されますが、同時に、私たちの体には、異常な体温上昇を抑えるための、効率的な調節機構も備わっています。暑い時には、自律神経を介して末梢血管が拡張します。そのため皮膚に多くの血液が分布し、外気への「熱伝導」による体温低下を図ることができます。また汗をたくさんかけば、「汗の蒸発」に伴って熱が奪われますから体温の低下に役立ちます。こうして私たちは体温調節をおこなっています。しかし気温が高くなると、皮膚から空気中へ熱の放出が難しくなり、さらに湿度が高くなると、汗の蒸発も少なくなり、発汗による体温調節もできなくなり、熱中症を発症します。特に体温調節機能が低下している高齢者や体温調節機能がまだ十分発達していない子供に発生しやすいことが特徴です。 

3.熱中症はどのような時に起こりやすいのでしょうか?

 熱中症が起こるかどうかは環境と身体の調子によります。環境としては高温・多湿、風が弱い、日差しが強い場合に起こりやすく、具体例では工事現場、運動場、体育館、一般の家庭の風呂場、気密性の高いビルやマンションの最上階などで多く起こります。また身体の調子としては激しい運動や労働で、身体に過剰な熱が産生されたり、脱水状態、高齢者、肥満、普段から運動をしていない人、暑さに慣れていない人、心臓疾患、糖尿病、広範囲の皮膚疾患などの病気のある人に発症しやすいと言えます。 

4.熱中症の症状は?

 熱中症の程度にもよりますが、軽症(Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる)では、こむら返り,立ちくらみ,四肢・腹筋の痙攣など(熱痙攣・熱失神)で、中等症(Ⅱ度:病院への搬送を必要とする)では、強い疲労感,めまい,失神,頭痛,嘔吐,下痢,体温上昇,皮膚蒼白,血圧低下,発汗などをきたします(熱疲労)。さらに重症(Ⅲ度:入院して集中治療が必要)では、38℃以上の高熱と脳障害(意識障害,せん妄)、肝・腎機能障害、血液凝固障害などをきたします(熱射病)。

           熱中症の症状と重症度分類

5.熱中症の治療は?

 応急処置としては、①休息:安静を保てる日陰へ運ぶ。衣服をゆるめたり、場合によっては脱がせる。②冷却:涼しい所で休ませる。必要に応じて冷却する。③水分補給:意識がはっきりしている場合に限り、水分補給を行う。意識障害や吐き気があれば点滴が必要。また呼びかけに対する返事がおかしいなど、意識障害がある場合や自力で水分摂取ができない場合、症状が回復しない場合には、至急病院へ搬送することが重要です。診断の上、点滴などを行い、発症後20分以内に体温を下げられれば、かなりの確率で救命できると考えられます。

 6.熱中症の予防は?

 ①熱中症について知っておく事、②暑い時、暑い所で運動しない事、③急な暑さ、湿度は要注意、④失った水分と塩分は補充する事、⑤服装は薄着で、⑥体調不良、睡眠不足、二日酔いでは無理しないこと、⑦具合が悪くなったら、応急処置、です。

【神奈川労働局HPから】

 地球温暖化や、熱エネルギーを産生する電化製品などの使用の増加に伴って、年々気温が上昇してきています。またここ数年間の夏の異常気象で、熱中症による死亡者数が、著明に増加しました。さらに様々な電力事情により、節電が必要となり、熱中症に対する対応が益々重要となると考えら れます。皆さん、熱中症に関する知識をまとめて、予防しましょう!  

2017年6~8月 産業医:平沼クリニック 大畑 充

 参考:WBGT値と気温相対湿度の関係: WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))は、労働環境において作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う簡便な指標です。暑熱環境を評価する場合には、気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮して総合的に評価する必要があり、WBGTはこれらの基本的温熱諸要素を総合したものとなっていますが、かなり複雑です。ここでのWBGT はその日の最高気温時の気温と湿度から推定されるものとして示しています。(ここで28~31℃は28℃以上31℃未満の意味)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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生き生き健康長寿は、毎日の工夫と社会参加の実行から(平成29年3月11日 平成会総会講演から)

 平成会の今年度のテーマは、生き生き健康長寿は、毎日の工夫と社会参加の実行からです。「生き生き健康長寿」とは、様々な生きがいをもって、健康な状態で長生きすること=健康寿命を延ばすことです。このためには、これまで平成会が長年継続してきた食事と運動、そして生活習慣の改善ができるように、毎日の生活を工夫し、生きがいをもてるような社会参加を行うことによって、フレイル(介護が必要とならないように予防が必要な状態)を予防することと考えられます。私の患者さんの中には地域の学校の通学の安全を守る社会活動や率先して平沼地区の清掃をされている方もございます。これはまさにご本人にとりまして、大きな生きがいとなるとともに、社会貢献となっておリます。どのような行動であれ、社会とつながって生活することは、健康寿命を延ばすことが証明されています(図1)。

 2016年のWHOの統計では日本人の平均寿命は83.7歳で世界第1位であり、男性は80.5歳で世界第6位、女性は86.5歳で世界第1位です。1947年当時の男性の平均寿命は50歳、女性は54歳であり、日本人はこの70年ほどの間に、30年以上も長生きするようになりました(図2)。しかし世界諸国と比べて、健康寿命(実際上の病気の有無に関わりなく、介護を受けたり寝たきりになったりせず、活動性の高い状態で日常生活を送れる期間)は、それほど突出して高いわけではありません(図3)。従って、いかにこの健康寿命を延ばすかが重要となってきます(図4)。

 平成会の講演では何度か「フレイル」についてお話をしてきました。フレイルとは、元々「虚弱」という意味で、要介護にならないように、予防が必要な状態を示し、健康な状態と要介護が必要な状態の中間の状態と考えることができます。これらは加齢や様々な疾患、ストレスなどが要因で起こってきます。現在の日本人の65歳以上の方の約11%(約300万人)がフレイルの状態であると推測されています。(図5)。フレイルは図6に示すような経過を経て、次第に介護状態となっていくわけですが(図6)、フレイルには様々な多面性があります。身体のフレイル(体の状態が虚弱になる)、精神心理のフレイル(意欲、判断力や認知機能の低下、うつなど)、社会性のフレイル(閉じこもり、孤食など)です(図7)。これらの状態が負の連鎖を起こし、フレイルが進行していきます。しかしこの経過の様々な点で、食事や運動、そして社会参加をすることで、フレイルへの移行を遅らせることが可能です。そしてこのフレイルの状態を回避することが、健康寿命を延ばすことになります。

それでは皆さん、ここでフレイルの自己チェックを行ってみて下さい。図8のチェックシートを利用して、ご自身の点数をチェックしてみて下さい。点数が、3点以上の方はフレイルと考えられます。また1~2点の方はフィレイルの予備軍と考えられます(図8)。その他身体的なフレイルのチェックは「指輪っかテスト」、「椅子立ち上がりテスト」などがよく使用されます(図9、図10)。

健康寿命を延ばし、「生き生き健康長寿」の生活を送るためにはどうしたらよいのでしょうか?図11に示す研究では、運動、食事、社会参加をすべてを行っている場合と、これらを全く行わない場合のサルコペニア(老化して筋肉が萎縮してしまう状態)の発症の差を示しています。これらを全く行わなかった方は行った方に比べ約3.47倍、サルコペニアとなることが示されています(図11)。

健康長寿のためには、栄養に気を付け(メタボ予防、乳製品やお肉を食べる、しっかり噛んで食べる)、運動(姿勢よく、広い歩道を歩く、目的をもって歩く、いつもより少し速く歩く)を行い、社会活動を行って社会とのつながりを維持し、フレイル・サルコペニアを予防することが重要です(図12)。実際、散歩の歩数と早歩きの時間によって、寝たきり、認知症、サルコペニアなどが予防できること(図13、図14)や社会参加によって、死亡率が低下したという報告がされています(図15)。

生き生き健康長寿のためにフレイルを予防するためには、日常生活の見直しが急務です。①禁煙②適度の飲酒③バランスの良い食事④運動⑤ストレスフリーの生活⑥社会参加 が重要です(図16)。平成会でこれまで培ってきた「食事」と「運動」を実践し、さらに様々な形で社会参加を実践することは、人と接する機会を増し、活動性の低下の予防、体力・筋力の低下を防止し、フレイルの悪循環を防ぎ、ひいては判断力の低下、認知症の予防となります。皆さん、しっかり食べて、しっかり動いて、みんなで楽しく社会活動を行って生き生き健康長寿を目指しましょう!(図17)。

 

     平成29年3月11日 (文責:平沼クリニック院長 大畑 充)

 

 

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冬に多い感染症―インフルエンザとノロウイルス―(平成会講演から):2016年12月3日

【新しいインフルエンザワクチン】

 過去数年間の流行の分析から、B型インフルエンザはB型ビクトリア系統とB型山形系統の混合流行が認められることが明らかとなりました。このため、2015年冬から、インフルエンザワクチンはこれまでの3価(A型2種類+B型1種類)から4価(A型2種類+B型2種類)へと変更となりました(図1)。WHOも4価ワクチンを推奨しており、世界的にも4価ワクチンへ移行しております。昨年変更されたワクチンは、予防効果があったことが報告されています(A型ではワクチン非接種者の発症率が3.2%であったのに対し、接種者は1.51%と低率でありました。B型では非接種者の発症率が1.5%に対し、接種者は1.4%と差はありませんでした)(図2)。今年のワクチンはA2種類(A/カルフォルニア7/2009/H1N1A/香港/4801/2014/H3N3)とB2種類(B/山形、B/ヴィクトリア)となり、昨年とはAH3N2が変更となっています。

【インフルエンザの症状・風邪との違い】

 かぜ症候群の症状はのどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻閉、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感などです。これに対し、インフルエンザは通常、これら風邪症状は少なく、突然の高熱、頭痛や筋肉痛などの全身症状で発症し、いわゆる風邪症状はこの後に出現してくることが多いことが特徴です。しかし高齢者やB型インフルエンザでは微熱にとどまることもまれではありません。インフルエンザの潜伏期間は1~3日ですが、感染した患者からのウイルスの排出は3日目が最も多く、7日までは排出の可能性があります。大多数の人は特に治療を行わなくても、1~2週間で自然治癒しますが、抗インフルエンザ薬の投与により、発熱期間は短縮し、重症化も予防されることがわかっています(図3)。

 【インフルエンザの種類】

インフルエンザにはA型、B型、C型の3種類があります。このうちB型とC型は1種類ですが、A型は、ウイルス遺伝子の表面にある赤血球凝集素(HAhaemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NAneuraminidase)という糖蛋白(人間の指紋のようなものと思って下さい)の組み合わせによって、約144種類のウイルス亜型が存在します(図4)。HAH1H1616種類、NAN1N9の9種類あり、これらの組み合わせにより多種類のウイルスの亜型が存在するわけです(図5)。

 

【インフルエンザの診断と治療】

1)インフルエンザの診断

通常インフルエンザの診断は①症状:突然の発症、38℃を超える発熱(高熱を呈さないこともあります)、風邪様症状、頭痛、関節痛などの全身症状、②迅速インフルエンザ診断キット(口や鼻からぬぐい液を採取して15分程度で結果がでます)で行います。しかし感染早期では迅速キットでは検出できない場合もあり、半日から一日後に再検査して感染が確定する場合もあります(図6)。

 2)インフルエンザの治療・出校・出勤:

 治療は①一般的対症療法(安静と睡眠、水分補給、部屋の保湿と加温、解熱剤(アセトアミノフェンが比較的安全)の投与、風邪様症状に対する投薬)と②抗インフルエンザ薬(経口剤のタミフル、吸入薬のリレンザ(ともに5日間投与)があり、最近は1回の投薬で治療が可能な注射薬のラピアクタ(1回注射のみ)、吸入薬のイナビル(1回の吸入のみ)も使用されています。これらの抗インフルエンザ薬は妊婦にも投薬可能で、授乳者は授乳は2日間中止するのが一般的です。また治療後の出校については、「学校保健安全法施行規則」により、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでとなっており、出勤に関しても同様に指導します(図7、図8)。

 

【インフルエンザの予防】

 インフルエンザの予防は帰宅時のうがい、手洗い、流行前のワクチン接種、適度な湿度の保持、十分な休養と睡眠が重要です。妊婦や授乳者へのワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けたことによって流産や先天異常の危険性が高くなるという報告はありません。また母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません(図9)。またインフルエンザワクチンを受けられないお方については図10に、他のワクチンとの接種間隔は図11に示しました。

 

【肺炎球菌ワクチンの接種の推奨】

 インフルエンザの重大な合併症に肺炎があります。インフルエンザ流行時の肺炎の原因は約55%が肺炎球菌であり、肺炎球菌ワクチンの接種も有用です(図12)。

【感染性胃腸炎とは?】

感染性胃腸炎はウイルスや細菌、有害物質などに汚染された食物や水によって引き起こされ、主として下痢・腹痛・発熱・嘔吐などの症状を起す病気です。毎年秋から冬にかけて流行します。一般的にはウイルスによるものは比較的軽症で、重症化例の80%以上は細菌性です(図13)。

【感染性胃腸炎の原因】

政府広報オンラインからのデータでは(図14)胃腸炎の原因はウイルス性70.0%、細菌性22.2%、自然毒1.0%、化学物質0.5%、その他1.8%、原因不明4.5%となっています。これらのうち狭義の意味では感染性胃腸炎はウイルス性、細菌性であり、自然毒や化学物質は非感染性胃腸炎と分類されます。また原因食品では、魚介・加工品類が最も多く、肉類、野菜、乳製品などからの感染も多く認められます。夏季には細菌性食中毒(カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなど)が多く、冬季にはウイルス性食中毒(ほとんどはノロウイルス)が多く認められます。

 【冬に多い感染性胃腸炎・ノロウイルス】

 感染性胃腸炎で最も多く認められるのは、ノロウイルスによるもので、11月頃から増加し、1月~2月にピークを迎えます。感染経路はウイルスを蓄積したカキなどの貝類の生食、患者の糞便・吐物からの経口感染、糞便や嘔吐物の乾燥した中に含まれているウイルス粒子が空気を介しての経口感染です。潜伏期間は1~2日で、症状は嘔気・嘔吐、下痢、腹痛が主な症状で発熱は比較的軽度です。症状は通常1~2日で改善傾向となります。軽快後も3日間は便中にウイルス排泄が続くため、患者や周囲の人の厳重な手洗いが必要です。一般的な治療は点滴などで脱水を改善し、整腸剤や抗生剤の投与を行います。強力な下痢止めは病原体の排泄を遅らせるため通常は使用しません。体温が38℃以上を持続したり、下痢が一日10回以上続いたり血便があったり、脱水、腹痛、嘔吐などの症状が強い場合には重症で、入院加療が必要です。感染予防は、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱、患者の糞便・吐物の処理で、アルコール消毒では死滅しません。消毒には次亜塩素酸ナトリウム液での処理が必要です。一般的な次亜塩素酸ナトリウム液の作り方は500mlのペットボトルを用意し、そのフタ1杯(5ml)のハイター(次亜塩素酸ナトリウム6%)を入れて、あとは水を入れて500mlにすると、1/100溶液(600ppm)が作成できます。ノロウイルスを不活化するのに、600ppmの濃度が必要であり、簡便な作成方法です(図15、図16)。

【感染性胃腸炎の予防】

 感染性胃腸炎は予防が最も大切です。予防には①食品の買い方(肉、魚、野菜は新鮮なものを購入し、賞味期限に注意)、②食品の保存の仕方(買い物から持ち帰ったらすぐに冷蔵庫・冷凍庫に保存)、③料理の下準備(手洗いを行い、野菜はよく水洗いをする。室温解凍はせず、解凍したらすぐ料理する)④料理の仕方(加熱するものは十分加熱する。途中で料理をやめる場合には冷蔵庫へ保存し、再調理では十分加熱する)⑤食事の仕方(手を洗い、料理は長く放置せず、早めに食べる)、⑥残った食品の扱い方(時間がたったら捨てる。暖めなおす時には75℃以上にする)などの注意が必要です。家族内で患者さんは出た場合には、手洗いをきちんと行い、タオルは患者さん専用にして、患者さんは浴槽には入らずシャワーとし、吐物や汚物は適切に処理し、感染を広げないようにしましょう)。                                         

                    平沼クリニック 院長  大畑 充

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健診の義務と意義・「病気は早期発見で予防」(2016年7月:「産業医だより」) から

 今回は各会社に勤務されております、労働者の定期健診についてお話いたします。私(平沼クリニック院長・大畑)は数社の産業医を兼務しており、定期的に社員向けに「産業医だより」を発行しています。今回は2016年7月の会社の衛生委員会で提示しました「産業医だより」を掲載いたします。事業主の方、労働者の方に、定期健診の義務と意義に関して、少しでもご理解いただければ幸いです。

【健診の義務と意義・「病気は早期発見で予防」】

  社員の皆さん、定期健康診断(健診)を受けていますでしょうか? 健診は事業者が行う義務があるとともに、労働者はそれを受ける義務があります。またご自身の健康の状態を把握するため、病気の早期発見のため、必ず健診は受けるようにして下さい。

 「病気が見つかるのが怖い」「健診は面倒だ」「自分は若いから健康には問題ない」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、症状が出てからの発見では、かなり進行している場合も少なくありません。健康診断はある意味、病期を早期に発見する、あるいは将来の慢性の病気につながるような軽度の異常を未然に発見するための手段です。現在の日本人の死亡原因(図)の1位はがん、2位は心疾患、3位は肺炎、4位は脳血管疾患です。このうち心臓病と脳血管疾患は高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が原因で、心疾患(冠動脈疾)の発症は(図)、生活習慣病が多ければ多いほど、発症のリスクは高くなります。またがん検診は一般の定期健康診断では行われませんので、40歳以上の方は、各市町村のがん検診(男性は胃、大腸、前立腺、女性は胃、大腸、乳房、子宮)や病院でのがん検診をお受けになることをお勧めします(図2)。