健診の義務と意義・「病気は早期発見で予防」(2016年7月:「産業医だより」) から

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 今回は各会社に勤務されております、労働者の定期健診についてお話いたします。私(平沼クリニック院長・大畑)は数社の産業医を兼務しており、定期的に社員向けに「産業医だより」を発行しています。今回は2016年7月の会社の衛生委員会で提示しました「産業医だより」を掲載いたします。事業主の方、労働者の方に、定期健診の義務と意義に関して、少しでもご理解いただければ幸いです。

【健診の義務と意義・「病気は早期発見で予防」】

  社員の皆さん、定期健康診断(健診)を受けていますでしょうか? 健診は事業者が行う義務があるとともに、労働者はそれを受ける義務があります。またご自身の健康の状態を把握するため、病気の早期発見のため、必ず健診は受けるようにして下さい。

 「病気が見つかるのが怖い」「健診は面倒だ」「自分は若いから健康には問題ない」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、症状が出てからの発見では、かなり進行している場合も少なくありません。健康診断はある意味、病期を早期に発見する、あるいは将来の慢性の病気につながるような軽度の異常を未然に発見するための手段です。現在の日本人の死亡原因(図)の1位はがん、2位は心疾患、3位は肺炎、4位は脳血管疾患です。このうち心臓病と脳血管疾患は高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が原因で、心疾患(冠動脈疾)の発症は(図)、生活習慣病が多ければ多いほど、発症のリスクは高くなります。またがん検診は一般の定期健康診断では行われませんので、40歳以上の方は、各市町村のがん検診(男性は胃、大腸、前立腺、女性は胃、大腸、乳房、子宮)や病院でのがん検診をお受けになることをお勧めします(図2)。

【定期健康診断とは】

 事業者は、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期に、下記の定期健康診断の11項目(表1)について、医師による健康診断を行わなければなりません(定期健康診断の実施義務(安衛則第44条))。

 ただし、年齢や医師が必要でないと認める場合には省略可能な項目があります。

・腹囲35歳を除く40歳未満の者、妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの、BMI(BMI=体重(kg)/身長(m)2)が20未満である者、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが22未満である者に限る。

・血液検査(貧血検査・肝機能検査・脂質検査):35歳を除く40歳未満の者

・心電図検査:35歳を除く40歳未満の者

【労働者の健康診断受診の義務】

労働者は、事業者が行なう健康診断を受けなければならない義務があります。ただし、事業者が指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合で、他の医師又は歯科医師の行なう労働安全衛生法に基づく健康診断に相当する健康診断を受けて、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでありません。

 【健康診断の結果の記録】

事業者は、この健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければなりません。

 【健康診断の結果についての医師からの意見聴取】 

事業者は、この健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者の健康診断の結果に基づいて、その労働者の健康を保持するために必要な措置について、次の方法によって、医師の意見を聴かなければなりません。

① 健康診断が行われた日から3か月以内に行うこと。
② 聴取した医師の意見を健康診断個人票に記載すること

 【健康診断実施後の措置】

事業者は、健康診断の結果についての医師の意見を勘案して、その必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、次のような適切な措置を講ずる必要があります。
① 就業場所の変更
② 作業の転換
③ 労働時間の短縮
④ 深夜業の回数の減少等の措置
⑤ 作業環境測定の実施
⑥ 施設又は設備の設置又は整備
⑦ 医師の意見の衛生委員会、安全衛生委員会、労働時間等設定改善委員会への報告
⑧ その他の適切な措置
 

【健康診断の結果の通知】 

事業者は、この健康診断を受けた労働者に対して、遅滞なく、健康診断の結果を通知しなければなりません。

 【健康診断結果報告義務】

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、この健康診断(定期のものに限ります。)を行なったときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第6号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

  健診は受けたら終わりではありません。その結果を確認して、再検査を指導された場合には再検査を受けて下さい。また生活習慣の改善の指導があれば、健診の結果を生かして、生活習慣を改善しましょう。健診は自己の健康状態を再確認する良い機会と思ってください。     

                2016年7月  産業医 平沼クリニック 大畑 充

 

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