『生活習慣の改善と運動で健康づくり、健康寿命を延ばそう!』(平成27年3月7日 平成会総会記念講演から)

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 2014年度の厚生労働省の発表では日本人の平均寿命は、初めて80歳を超えて、女性は86.61歳(世界1位)、男性は80.21歳(世界4位)となりました(図1)。これは1990年当時と比べますと男女とも平均寿命は約5歳程度延び、まさに超高齢化社会の到来と言えます。ちなみに神奈川県の平均寿命は男性は80.25歳(全国5位)、女性は86.63歳(全国15位)で、男女とも日本の平均を上回っています。皆さんは「健康寿命」という言葉をご存じでしょうか?

 まず「平均寿命」の定義ですが、これは「その歳に生まれた人が(社会情勢などの変化が無い限り)何歳まで生きられるかを示したもの」とされます。これに対し「健康寿命」とは「実際上の病気の有無に関わりなく、介護を受けたり寝たきりになったりせず、活動性の高い状態で日常生活を送れる期間」と定義されます(図2)。人は誰でも、健康で長生きしたいものですが、そのためには、この健康寿命を延ばすことが必要となります。

 では日本の現状はどうでしょうか? 図3には日本人の平均寿命と健康寿命の推移を示しました。2013年のデータでは平均寿命と健康寿命の差は男性では9.02歳、女性では12.4歳の差があり、この間介護生活を送ると推測されます。

 それでは健康寿命を延ばすにはどうしたらよいのでしょうか。それは当然ですが、寝たきりにならないこと、介護を受けないで生活出来ることと言えます。ここで「フレイル」という言葉をご紹介しましょう。「フレイル」とはFrailtyの略語で、「年齢に伴って、筋力や心身の活動の低下した状態」のことです。つまり健康寿命を延ばすには、この「フレイル」から脱却する事が重要です。高齢者の多くはこの「フレイル」の状態を経て介護状態になります。一旦介護状態になりますと、元の健康な状態に戻る事は困難です。「フレイル」は介護状態にならないように予防が必要な人と考えられ、日本では65歳以上の方の約11%、約300万人が「フレイル」の状態と想定されています(図4)。「フレイル」は図5に示すような悪循環を繰り返して、次第に介護状態となっていくわけです。

 

 現在あなたが「フレイル」状態かどうか、推測するテストがあります。以下の項目の中で、3つ当てはまる項目があれば、「フレイル」の疑いがあります。

 ①体重減少(1年間で2~3kg)

 ②以前より疲れやすくなった

 ③筋力の低下(例えば買物で2リットルのペットボトルなどを運ぶのが大変)

 ④歩くのが遅くなった(横断歩道を青信号の間に渡るのが困難)

 ⑤身体の活動性の低下(最近、趣味のサークルに出かけなくなった)

  元気で長生き、すなわち健康寿命を延ばすには今までお話した「フレイル」の予防が大切です。そのためには図6に示した日常生活の見直しが重要です。特に食事と運動は極めて重要で、バランスの良い食事は重要ですが、高齢になった際にはある程度のたんぱく質の摂取(お肉も必要!)が必要です。さらには一日5,000歩以上の歩行と早歩きの実践で、寝たきりや、筋力低下、骨折、認知症の予防に効果があったとの報告もあります。

 図7には65歳以上の「寝たきり」状態の原因を示しました。原因の37.9%は脳血管疾患、骨折・転倒が12.4%、認知症が10.1%とされています。脳血管疾患に予防は、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、喫煙、肥満などの生活習慣病の予防が重要で、これらの疾患を持つ方はそれらのコントロールが重要です。また心房細動(心臓の動きが規則正しく動かず、脈が全く不規則になる不整脈)は、通常の脳梗塞に比べ、心臓内から大きな血栓が脳内に飛んで、極めて大きな脳梗塞を起こす、危険な不整脈です。これは70歳代の約5%、80歳代の約10%程度に認められ(自覚症状がなく、診断されていない方はそれ以上存在します)、脳梗塞の予防のため血液を固まりにくくする治療が必要となります。また認知症は現在根本的に治癒させる薬はありませんが、早期に発見し、早めに治療することで、寝たきりになる期間を延長できます。骨折と転倒の予防には図8に示しましたように、有酸素運動、筋力の増加、骨粗鬆症の治療が重要です。

 

  これまでお話しましたように、生活習慣の改善と運動により健康づくりを行い、「フレイル」の状態を予防し、是非とも健康寿命を延ばしましょう!    (文責:平沼クリニック院長 大畑 充)

カテゴリー: 医療全般   パーマリンク

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