インフルエンザの最新情報と肺炎球菌ワクチンのお話:2014年12月6日(平成会講演から:大畑医師)

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【風邪とインフルエンザの違い】

 かぜ症候群は上気道(鼻腔、副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭)に対して急性に発症する炎症性疾患で、通常成人では年2~4回、子供は5~9回も罹患します。症状はのどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻閉、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感などです。インフルエンザは通常、これら風邪症状は少なく、突然の高熱、頭痛や筋肉痛などの全身の痛みで発症し、いわゆる風邪症状はこの後に出現してくることが多いことが特徴です(図1)。インフルエンザの潜伏期間は1~3日ですが、感染した患者からのウイルスの排出は3日目が最も多く、7日までは排出の可能性があります。大多数の人は特に治療を行わなくても、1~2週間で自然治癒しますが、抗インフルエンザ薬の投与により、発熱期間は短縮し、重症化も予防されることがわかっています。 

【インフルエンザの種類】

 インフルエンザにはA型、B型、C型の3種類があります。このうちB型とC型は1種類ですが、A型は、ウイルス遺伝子の表面にある赤血球凝集素(HA:haemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NA:neuraminidase)という糖蛋白(人間の指紋のようなものと思って下さい)の組み合わせによって、数十種類のウイルス亜型が存在します(図2)。HAはH1~H16の16種類、NAはN1~N9の9種類あり、これらの組み合わせにより多種類のウイルスの亜型が存在するわけです。20世紀に流行したのは H1N1(ソ連型), H2N2(アジア型),  H3N2(香港型), H1N1pdm2009(新型と言われたもの)などです(図3)。

  【インフルエンザの診断と治療】

1)インフルエンザの診断

 通常インフルエンザの診断は①症状:突然の発症、38℃を超える発熱(高熱を呈さないこともあります)、風邪様症状、頭痛、関節痛などの全身症状、②迅速インフルエンザ診断キット(口や鼻からぬぐい液を採取して15分程度で結果がでます)で行います。しかし感染早期では迅速キットでは検出できない場合もあり、翌日再検査して感染が確定する場合もあります。

 2)インフルエンザの治療・出校・出勤

 治療は①一般的対症療法(安静と睡眠、水分補給、部屋の保湿と加温、解熱剤(アセトアミノフェンが比較的安全)の投与、風邪様症状に対する投薬)と②抗インフルエンザ薬(経口剤のタミフル、吸入薬のリレンザ(ともに5日間投与)があり、最近は1回の投薬で治療が可能な注射薬のラピアクタ(1回注射のみ)、吸入薬のイナビル(1回の吸入のみ)も使用されています。これらの抗インフルエンザ薬は妊婦にも投薬可能で、授乳者は授乳は2日間中止するのが一般的です(図4)。また治療後の出校については、「学校保健安全法施行規則」により、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでとなっており、出勤に関しても同様に指導します。

【インフルエンザの予防】

 インフルエンザの予防は帰宅時のうがい、手洗い、流行前のワクチン接種、適度な湿度の保持、十分な休養と睡眠が重要です(図5)。妊婦や授乳者へのワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けたことによって流産や先天異常の危険性が高くなるという報告はありません。また母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません(図6)。また他のワクチンとの接種間隔は図7に示しました。

 【新型インフルエンザ】

 新型インフルエンザは、これまでヒトが感染したことのない新しタイプのインフルエンザで、多くは鳥インフルエンザが変化して出現すると考えられています。すべての人が抵抗力を持っていないため。世界中で同時に流行した場合には大被害をもたらすと考えられています。2013年2月、中国で世界初の鳥インフルエンザによるヒト感染事例が発生しました。これはH7N9亜系A型インフルエンザによる流行と判明し、本ウイルスはヒトへの適応を高めているものの、現時点では継続的なヒトからヒトへの感染伝播は認められていません。しかし今後鳥インフルエンザA(H7N9)が新型インフルエンザに移行する可能性は否定できません。これまで約400例が報告されており、致命率は30%に達しています。原因となる動物(自然宿主)ははっきりとわかっていませんが、市場で売られている、生きている鳥類の可能性が高いとされています(図8)。

 

【肺炎と肺炎の予防】

 近年肺炎による死亡者が増加しており、これまで死因の4位(1位・悪性新生物、2位・心疾患、3位・脳血管疾患、4位・肺炎)でしたが、平成23年には肺炎が死因の3位となっています。このうち高齢者の肺炎の原因で最も多いのは肺炎球菌(肺炎の原因の約40%)ですが、この肺炎球菌にはワクチン(1回接種で約5年間は有効です(対象は65歳以上))があり、かなりの予防効果を持っております。また今年から65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳以上の方に公費でワクチン接種が行われることになりました(図9)。

 

               2014年 12月6日 平沼クリニック 大畑 充

 

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