インフルエンザの動向とその対策

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今年もまたインフルエンザの流行の時期が近づいてきました。1968 年の香港型インフルエンザの流行以来、昨年は40 年ぶりに新型のインフルエンザが世界的に大流行し、ワクチン接種、治療も含めて大混乱をきたしました。この新型ンフルエンザは、ヒト型、トリ型、北米のブタ型及びユーラシアのブタ型の4種類の遺伝子を有する新型ウイルス(A型(H1N1))であり、人類がいまだかつて経験したことのない新しいインフルエンザウイルスだったのです。昨年の流行から言えることは、確かに冬季にインフルエンザは多いのですが、新型インフルエンザに関しては1年中発生するということです。今回はこの大流行した新型インフルエンザの特徴について総括し、またインフルエンザ全般に対するお話をしたいと思います。

【昨年度大流行した新型インフルエンザの特徴】
1.感染力は比較的強い(暴露された人の中で感染した人の割合は、季節性では5~15%、新型では22~33%)。
2.若年者の感染が多い。
3.感染経路は主に飛沫感染であり、咳やくしゃみをする感染者の1m以内にいると気道感染する危険性がある。
4.潜伏期は1~7 日(多くは1~4 日)、感染性は発症する1 日前から発症後7 日までが多い。大部分は軽症で1週間で回復する。
5.インフルエンザウイルス迅速検査によるA 型陽性率は18~67%と低い。
6.季節性では高齢者の死亡が多いが、新型では基礎疾患(糖尿病、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、心病)を有する患者や妊婦、乳幼児に重症者が多い。
7.死亡率は季節性の0.1%に比べて同等かそれ以下である。また日本は世界の中で圧倒 的に死亡率が低い。

【新型インフルエンザの各国の死亡率と日本の死亡率の低さの要因】

各国の新型インフルエンザの死亡率

日本の新型インフルエンザ死亡率:世界で圧倒的に低い!
・人口10 万人に対し0.16(62.5 万人に一人)
・我が国の推計患者2,100 万人中171 名(12 万人に一人)
⇒要因①早期に抗インフルエンザ薬による治療が行われたこと(他の国では重症化してから投与された例が多い)。
②国民皆保険などの医療制度の良さ
③手洗い、マスク着用などの予防策を、きちんと実行した(国民の意識の高さ)。
④学級閉鎖の効果

【インフルエンザとは?】

インフルエンザは風邪の症状と似ていますが、風邪に比べて急速に発症する 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛や胃腸症状などの全身症状が出現するのが特徴です。感染は咳などの飛沫感染や接触感染で、潜伏期は1~3日ですが、感染した患者からのウイルスの排出は3日目が最も多く、7日までは排出の可能性があります。大多数の人は特に治療を行わなくても、1~2週間で自然治癒します。症状は A型の方が B型に比べて強いことが多く、 B型の方が薬が効きにくいといわれています。流行期間は 11月~4月です。昨年大流行した新型インフルエンザは A型インフルエンザの一種で、ウイルスの遺伝子が変異したものです。通常のインフルエンザと同様の症状ですが、今までに人類が感染したことのない新しいタイプのウイルスで、誰も免疫を持っていないウイルスであったため世界的に大流行したのです。さらに 1年中発生しており、今までの常識とは随分と異なり、夏でもインフルエンザに罹る可能性があります。

【インフルエンザの症状】

主な症状は、これまでのインフルエンザも新型も突然の高熱やだるさ、全身の筋肉痛や頭痛、食欲不振、咳、鼻水、吐き気、のどの痛み、下痢などです。新型は通常の季節型に比べて、下痢・嘔吐がやや多い傾向にあると言われています。

【インフルエンザの治療】

通常の季節型インフルエンザも新型も基本的治療は同じで、下記のように一般療法、対症療法、抗ウイルス薬の投与を行います。健康な方であれば、一般療法や対症療法と自宅療養で十分な場合が多いのですが、合併症を持っている患者さんや妊婦さんは積極的に抗インフルエンザ薬を投与するのが良いと考えられています。重症化した場合には入院加療が必要となります。

1)一般療法:
①安静・十分な睡眠
②部屋の加湿 (60-70%)、保温 (18-20度)
③発熱に対する氷冷、脱水予防(水分補給,補液)
④うがい(咽頭上皮細胞に付着したウイルスを取り除くためとウイルスの感染を助ける病原細菌を付着させないため )

2)対症療法:
①解熱・鎮痛薬(小児のアスピリンなどサリチル酸系解熱鎮痛薬は禁忌、また脳症・脳炎を重症化させることからボルタレン・ポンタールは禁忌):アセトアミノフェンが比較的安全
②去痰薬・抗炎症薬・気管支拡張剤

3)抗インフルエンザ薬:タミフル、リレンザの投与。新薬のイナビル(吸入薬で 1回吸入で治療終了)およびラピアクタ(注射薬で、1回注射するのみで治療終了)。

【インフルエンザの予防】

感染予防にはワクチンが最も有効です。今年度のインフルエンザのワクチンはこれまでの A型インフルエンザ(A型香港 (A/H3N2亜系)と B型インフルエンザとともに昨年世界的に大流行した新型インフルエンザ(A /H1N1)の3種類の株からなり三価ワクチンが開発されています。10月から予防接種が開始され、料金は各市町村、医療機関で異なります。予防効果はおよそ 5ヶ月間ですので、11月下旬までに接種することを勧めます。ワクチンは妊婦は妊娠14週以降であれば可能、授乳中の患者には問題ありません。

一般的な予防は、手洗い、うがい、マスクです。手洗いやうがいは咽頭粘膜や手指など身体に付着したインフルエンザウイルスを物理的に除去します。具体的には、手洗いは石鹸を泡立てて 30秒以上行い、接触したウイルスを洗い流します。うがいは口の中をまず2回ゆすいで、その後のどの奥まで 2回うがいします。インフルエンザウイルスは飛沫感染(感染者の咳やくしゃみなどによって放たれる飛沫や唾液、鼻水などの微粒子によって感染すること)であり、通常はサージカルマスクなどである程度の予防は可能です(布やカーゼでは予防効果は減ります)。また必要なければ人ごみや外出を控えること、十分な休養を取ることも大切です。

文責:大畑 充

カテゴリー: 感染症のお話し   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

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