インフルエンザとは?

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1.普通感冒(かぜ)について:

朝夕は随分と寒くなってきており、かぜも流行ってきています。平沼診療所ではすでにインフルエンザワクチンの接種が開始となりました。今回はインフルエンザとその予防についてお話します。

一般に「かぜ」と呼ばれるものは、かぜ症候群あるいは感冒症候群として総称され、上気道(鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭等)に対して急性に発症する炎症性疾患です。通常、成人では年に2~4回、子供は5~9回も罹患すると言われています。症状はのどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻閉、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感などで、潜伏期間は通常2~5日です。感染経路はくしゃみや感染者との接触、感染者が使用したタオルなどの生活用品等と考えられています。かぜの原因の80~90%はウイルスで、その他には細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどがあります。かぜ症候群の病原ウイルスは下記の表に示しますように200種類以上発見されています。このうち秋と春に多いライノウイルスと冬に多いコロナウイルスによるものが50%以上を占めるといわれています。また冬にはノロウイルスやロタウイルスによる胃腸症状を主とするかぜもよくみられます。これら中でインフルエンザウイルスは、伝染性が強く症状が重いため、しばしば世界的な流行が問題となっています。

かぜ症候群の病原ウイルス

インフルエンザウイルス(A型、B型、C型)

パラインフルエンザウイルス  4型

RSウイルス
1型

アデノウイルス 40型

ライノウイルス 100型以上

コックサッキーウイルス(A群1-24型、B群1-6型)

エコーウイルス 1-34型

コロナウイルス 3型

レオウイルス 3型

2.インフルエンザとは?:

インフルエンザウイルスによる感染症で、症状は風邪と似ています。しかし通常の風邪は鼻汁、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が主な症状ですが、インフルエンザはこれらに比べ、比較的急速に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛や胃腸症状などの全身症状が著明な点が特徴です。軽いものは「かぜ」と区別はできません。38℃以上の発熱があり、「いつもの風邪より身体が辛い」といった症状があれば強く疑います。感染は飛沫感染や接触感染で、潜伏期は1~3日です。大多数の人は特に治療を行わなくても、1-2週間で自然治癒します。症状はA型の方がB型に比べて強いことが多く、B型の方は薬が効きにくいといわれています。流行期間は11月~4月で、前半はA型が多く、後半はB型が多いのが一般的です。日本では2002-2003年にかけて推定約1000万人が罹患しました。致死率は0.05%程度ですが、ほとんどは65歳以上の高齢者です。また小児のインフルエンザ脳炎は年間100~300例発症し、その死亡率は30%と高い。

3.インフルエンザの種類:

インフルエンザウイルスはA、B、Cの3型に分けられますが、A型はさらに数十種類に分類されますが人間界に存在するのはH1N1,
H2N2, H3N2の3つです。B型やC型はそれぞれ1種類のみです。現在世界中で流行しているのは2種類のA型(A型香港(H3N2)、A型ソ連(H1N1))および1種類のB型です。このようにA型が数種類あるため、人によっては1シーズンA型ソ連にかかった後、A型香港にかかったり、A型にかかった後、B型にかかったりすることがあります。インフルエンザウイルスはウイルスそのものが変異を続けるため、数年ごとに大流行をもたらす事になるわけです。10~40年周期では新型ウイルスが出現して世界中に大被害を及ぼしてきました。このような変異のため、毎年流行に合わせてワクチンも作り替えなければならないわけです。同じインフルエンザウイルスの中でもC型ウイルスは変異しにくいため、一度感染すると一生に渡る免疫ができ、あまり怖くないウイルスといえます。しかしA型ウイルスは症状が重い上、変異しやすいため、数年ごとに世界的な大流行をもたらす手強いウイルスですで、これは人のインフルエンザウイルスがアヒルやブタなどに感染して、その体内で遺伝子の組み替えが起こるためだと考えられています。インフルエンザの流行がアジアやロシアから始まるのが多いのも、アジアやロシアではアヒルを飼う農家が多く、アヒルと人のインフルエンザウイルスが混じり合いやすい環境にあるためと考えられています。またインフルエンザウイルスは低温・低湿度の環境を好みます。

ウイルスの型

ウイルスの変化の程度

症状

A型

非常に変化しやすい

最も重い

B型

変化しにくい

重い

C型

非常に変化しにくい

普通

4.診断:

色々な方法(ウイルスの分離や血清抗体価など)がありますが、迅速に診断するためには、迅速キットが最も有用です。通常検体は咽頭や鼻腔から採取しますが、感度は鼻腔の方が高いといわれています。しかしキットの感度は50~80%で、迅速キットで陰性でもインフルエンザの可能性はあるわけです。診断キットは鳥インフルエンザ(H5N1)には役に立ちません。

5.治療:

A型にはアマンタジン(シンメトレル:パーキンソン病の治療薬)も有効ですが耐性や副作用が多くあまり使用されません。日本では、A型、B型の両方に効く、タミフル(飲み薬)、リレンザ(吸入薬)が使用されていますが、発病48時間以内の服用が必要です(タミフルは小児用ドライシロップがありますが1歳未満には使用しない)。しかし欧米諸国では自然に治癒する疾患であり、あまりこれらの薬は使用されていません。さらに薬を服用しても発熱期間が1~2日短縮されるだけというデータもあります。治療には十分な休養と、水分補給が必要です。発熱に対してはインフルエンザ脳炎の危険性を少なくするために解熱剤としてはアセトアミノフェン(カロナールなど)を使用します(15歳未満の小児に対してはアスピリンなどのサリチル酸、ボルタレン、ポンタールは基本的には禁止。成人でも基本的にはアセトアミノフェン(カロナールなど)を使用)。タミフル、リレンザは妊娠中の投与に関しては安全性は確立されておらず、有益性が危険性を上回る場合には投与します。授乳中の患者さんは、乳汁中に薬が移行するので、投薬中は授乳を避けるようにします。リレンザはタミフルに比べ耐性が少なく、タミフル耐性ウイルスにも有効。タミフルやリレンザは鳥インフルエンザにも有効。タミフルの使用期限は5年間。タミフルの耐性出現率は成人では1%程度、小児では5~20%との報告。

6.予防:

ワクチン接種が最も有効です。1回法と2回法では有効性が差がないという報告もありますが、2回法の方が抗体価が高いとの報告もあり、13歳以下の患者や65歳以上の患者、呼吸器疾患・心疾患・糖尿病患者などでは2回法を一応薦めます。ワクチンの効果が現れるまでには約2週間程度かかり、予防効果はおよそ5ヶ月間ですので、可能な限り12月上旬までに接種することを勧めます。報告によるとワクチンは65歳以上の健康な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%に死亡を阻止する効果があったとされています。ワクチンは当然、風邪やSARS、鳥インフルエンザには効果はありません。また感染したら、マスクも有用です(飛沫感染)。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使ったりして適度な湿度(50~60%)を保ちましょう。ワクチンは不活化ワクチンであり、胎児に影響はないとい考えられており、妊婦は接種不適当者には含まれていませんが、妊婦に対しては十分な調査がなく、妊娠初期には避けること、利益が危険性を上回る場合に接種すべきです。母乳を介してお子さんに影響を与えることはないので、授乳中の患者には問題ありません。また精子への影響はないため、妊娠希望のカップルの男性にも問題はありません。またワクチンによってインフルエンザを発症することはありません。ワクチンは鳥インフルエンザや新型インフルエンザには無効。手洗い・うがいも大切な予防法です。

7.インフルエンザに罹患したら何日休ませるか?:

一般的には発病後3~5日間ウイルスを排出するといわれています。この間患者は感染力があると考えられます。抗インフルエンザ薬の投与により発熱期間は1~2日間短縮されます。学校保険法では「解熱した後、2日間は出席停止」としていますが、職場復帰に関しては定まったものはなく、やはり一般的には解熱後2日間は自宅療養を勧めます。

8.鳥インフルエンザ

鳥インフルエンザ(H5N1)は鳥から人への感染はありますが、今のところ人から人への感染はありません。しかし将来的にはウイルスが変異し、人から人への感染を起こす可能性はあります。現在のところ、診断キットやワクチンは無効ですが、タミフルやリレンザなどと治療薬は有効です。

9. インフルエンザ患者の病室での管理は?

インフルエンザの患者さんが部屋の中にいた場合、患者さんの飛沫(咳やくしゃみと共に出る)の中にインフルエンザウイルスがいる可能性がありますが、基本的にはインフルエンザは飛沫感染であり、飛沫というのは1~2メートル以上は飛びませんし、患者さんがマスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えられます。また、手指を介した接触感染もありますので、手洗いは重要です。しかし、狭い気密な部屋などでは、比較的長くウイルスが浮遊することもありますので、時々換気をすること、部屋の湿度を適度に保つことなどは意義があります。インフルエンザウイルスは、ほとんどの消毒薬に弱く、十分な湿度があれば生存期間も短いので、通常の清掃で十分だと考えられますが、あきらかな目に見える呼吸器分泌物による汚染がある場合には、通常の消毒薬により消毒しておくほうがよいでしょう。インフルエンザを発症中に使用した衣服にはウイルスが付着していることが予想されますが、これまでの知見ではこれから感染を起こすことはまれだと考えられています。使用後は、通常の洗濯をして日なたに干しておけばウイルスの感染性は消失します。

文責:大畑 充

カテゴリー: 感染症のお話し   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

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