インフルエンザとその予防、今年流行のマイコプラズマ肺炎とRSウイルス感染症

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1.インフルエンザの動向
 2009年に世界的に大流行した「新型インフルエンザ」は、2010年には終息を見せ、通常の季節性A型インフルエンザが優勢になりました。しかし2010年末から2011年6月頃まで、再び新型インフルエンザ(2011年3月に様々な規制のある「新型」という名称は廃止され、インフルエンザ(H1N1)2009と変更され、季節性インフルエンザと同等に扱われることになりました)が優勢となり、その後はB型インフルエンザが優勢となってきております(図1)。新型インフルエンザは世界中で多くの死亡者を出しましたが、日本は最も死亡者が少ない国の一つであり、その要因は①早期に抗インフルエンザ薬による治療が行われたこと(他の国では重症化してから投与された例が多い)、②国民皆保険などの医療制度の良さ、③手洗い、マスク着用、ワクチンなどの予防策をきちんと実行した国民の意識の高さ、④学級閉鎖の効果であると考えられます。 2.インフルエンザとその種類                                                                                                                                                                                        インフルエンザは通常の風邪(急性上気道炎)とは症状はやや異なり、突然の発熱、頭痛、関節痛、全身倦怠感などの全身症状を伴うことが特徴的です。これからの時期、突然に高熱が出現した場合には早めに医療機関を受診しインフルエンザの検査を受けることをお勧めします。インフルエンザにはA型、B型、C型の3種類はありますが、新型インフルエンザはこのうちA型に属します(図2) 

   3.インフルエンザの診断、治療、予防

1)インフルエンザの診断:インフルエンザの診断は①臨床症状(突然の発症、38℃を超える発熱(ただしインフルエンザ(H1N1)2009は、高熱を呈さないこともあります)、風邪様症状、頭痛、関節痛などの全身症状)②迅速インフルエンザ診断キット(口や鼻からぬぐい液を採取して15分程度で結果がでます)、血清抗体価、ウイルス分離・同定、PCR法(遺伝子の検査)等がありますが、迅速キットが最も一般的に行われている診断方法です。

2)インフルエンザの治療:治療は①一般的対症療法(安静と睡眠、水分補給、部屋の保湿と加温、解熱剤(アセトアミノフェンが比較的安全)の投与、風邪様症状に対する投薬)と②抗インフルエンザ薬(経口剤のタミフル、吸入薬のリレンザ(ともに5日間投与)があり、近年これらに加え、注射薬のラピアクタ(1回注射のみ)、吸入薬のイナビル(1回の吸入のみ)が使用されています)。

 3)インフルエンザの予防:インフルエンザの予防は帰宅時のうがい、手洗い、流行前のワクチン接種、適度な湿度の保持、十分な休養と睡眠が重要です。

 4.マイコプラズマ肺炎とは? マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマを病原体とする肺炎で、今年は大流行しており、2000年以降の定点観測で過去最高の感染者数を記録しています。潜伏期間は2~3週間と長く、症状は発熱、全身倦怠、頭痛などの後、3~5日後より乾性の咳が増強し、解熱後も1か月近く咳が続きます。診断は特異的IgM抗体迅速検出キット、血清抗体価、PCR法などがあります。治療はマクロライド系抗生剤を使用しますが、近年耐性菌も出現してきており、その場合には別の抗生剤の投与も考慮します(図3)。 

 

5.RSウイルス感染症とは? RSウイルス(respiratory syncytial virus)による感染症で、5歳以下の小児の感染がほとんどで、今年は大流行しています。潜伏期間は2~8日、症状は発熱、鼻水から、次第に咳や痰が多くなってきます。基礎疾患を有する小児では重症化しやすいので要注意です。診断は迅速抗原検出キット、血清抗体価、ウイルスの分離・同定などがあります。ワクチンや有効な治療法はなく、現在、重症化を抑制する唯一の薬剤として、RSウイルスに対し特異的な中和活性を示すモノクローナル抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)の予防投与が考慮されています(対象となる患者は限定されています)。

 6.肺炎球菌ワクチンの薦め  高齢者の肺炎の原因で最も多い肺炎球菌(肺炎の原因の約40%)に有効なワクチンです。しかし肺炎球菌以外の肺炎には効果がないので、すべての肺炎を予防できるわけではありません。現在日本人の死亡原因の4位が肺炎であり、近年では、ペニシリンなどの抗生物質が効きにくい肺炎球菌(耐性菌)が増加しており、このような耐性菌にもこのワクチンは有効です。またこのワクチンには予防効果とともに、肺炎になっても軽症ですむむという効果もあり、1回接種で約5年間は有効です(対象は65歳以上の方です)。文責:大畑 充

 

 

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